39歳になった日の夜、新しい趣味を見つけた。
それも「物の声を聴く」こと。
事の顛末はというと。
そもそもは何日か前から作っていた細い毛糸の小さな巾着袋が誕生日の夜に完成した。
中に入れるもの(以降『モノ』)は予め決まっていたから、ようやく中身と袋をセットにすることができた。
巾着袋の締まりが悪くても、とりあえずの期間保管するには問題ないから、私はそのままの状態でどこかにしまうつもりでいた。
袋とモノとをセットして「これで完璧!」と思った私は念のためにペンジュラムをかざして「これでいいよね」と聞いてみた。
絶対にYESが出ると確信してたのに、ペンジュラムはNOを突きつけてきた。
私は何かの間違いかと思って、もう一度聞いた。
やっぱりNO。
同じ質問を繰り返すこと数回、一度もYESが出ない。
さすがに何かがおかしいと思って、モノをもう一度袋から取り出した。
袋には袋に、モノにはモノに、それぞれの状態を尋ねた。
どちらもきれいなYESが迷わず出ている。
「良いもの+良いもの=良いもの」と頑なに信じていたけれど、2つがくっついて2つで1つみたくなると、またもやNOが出る。
そこでもしかして…と思って、モノに対して「袋の中で保管されるのが嫌ですか?」と聞いてみた。
そうしたら「YES」と出た。
「巾着袋が嫌いですか?」はNO、「巾着袋が好きですか?」はYES。
でも、「巾着袋の中にずっと入ったまま」の状態は嫌らしく、それはNOと出た。
その後も色々質問を重ねて、最終的には持ち主の元へ行くまでは、今のところ袋の外で、素っ裸というかそのままの状態で保管することになった。
それがモノの希望だった。
ただモノ自体は私のものではなくて、他人様に渡る予定のものだから、いくらなんでもそのままの状態で置くのは忍びなかった。
そこで置き方についてもどう置くのがモノにとって良いのかを聞いた。
巾着袋を座布団のようにしてその上に置くことで合意を得られた 笑。
巾着袋も直置きは私が嫌で、その下にさらに別の布、というよりも私がドミニカにいた頃作った手作りの袋をさらに敷いた。
それについては何の不満もないらしく、即座にオッケーが出た 笑。
ちなみに下に敷く布も何でもいいわけではなくて、今のところその布袋だけがオッケーになってる。
他のハンカチとかはNOだった。
さらに、その状態で普段どこに保管されるのが好ましいかについても聞いた。
他人様に渡る予定だから、私としては変な場所には置きたくなかった。
クローゼットは絶対に嫌だと出て、そうすると部屋の中になる。
本来ならクローゼットに保管するのが筋だと人間の私は思ってたけど、モノ自身は嫌だと言うから、じゃあ部屋のどこへ…と思い、さらに質問を重ねた。
部屋を普通に4等分して、そのうちのどこがいいのかを聞いた。
私の中では4つのうち1箇所は絶対に有り得ないから、そこは最後に聞いた。
だけど他の3つがNOで、「えっ、もしや4ヶ所目?」と半信半疑どころかそんなわけないと思ったけど、モノは4ヶ所目がいいと言う。
4ヶ所目にあるのは、普段私が使う布団が置かれている。
寝る時はさておいても、起きてる時はそこに収納されている。
念のため、私と一緒に職場に行きたいかを聞いた 笑。
絶対にNOだろうと思ったら、それは本当にNOだった。
じゃあ仕事に行ってる間、そのあげた布団の上がいいのかを聞いたら、そこがいいと言う。
布団は汚くないにしても、そんな毎日使うところに置くのは私の方がはばかられた。
だけど、モノ自身は意に介さないどころかそれがいいと言う。
だから、座布団と化した毛糸の袋とさらにその下に別の布製の袋を敷いて布団の上に昨日は置いて仕事に行った。
私の方が気が気じゃなくて、帰って部屋に行くなり真っ先にモノの様子を見に行った。
座布団調の袋の上に鎮座している。
何とも滑稽な様子に見えるのかと思っていたけれど、2歳の姪っ子がうちにいた時みたいな気持ちに似ていた。
姪っ子がいた時は、一目散に家に帰って姪っ子の顔が見たかった。
実際に見ると癒されたし嬉しかった。
世のお父さんたちはこういう気持ちなんだろうか…なんて思いながら、私もただただ姪っ子に会いたかった。
その時の気持ちに似ていた。
反対に私が寝る時はどうするかと言えば、その時も布団の近くに置かれたいということでそうしてる。
この話には続きがある。
布団の上げ下ろしをするとなると、どうしても転がったりしないように一度は布団の上から下ろして地面へ、そしてまた上げたら布団の上へと移動させる必要がある。
素手はまずいだろうと思って、最初は適当な布を手にかぶせて移動させていた。
だけどそれは私が面倒で(つまみにくい)、適当な手袋を100均で買うことにした。
それで出かけたついでに丁度100均があったから中に入ろうとした。
その時に一瞬「もしかして…。私は素手で触ったら良くないと思って手袋を買おうとしてるけど、本当にそうされたいんだろうか?」と思った。
車に戻ってペンジュラムに聞いた。
ペンジュラムは手袋を買うことにNOと言った。
布をかぶせた手で触るのもNOだった。
となると残るは素手になるけれど、まさかの素手にYESが出た。
とりあえず手袋を買うのはやめて、家に戻ってからまたモノに聞こうと思った。
モノはやっぱり素手が良いらしい。
人間の私には、他人様に渡るものなら素手なんて…と思うけれど、モノはそれがいいと言うからしかたない。
さすがの私も素手で日々、少なくとも布団の上げ下げを思えば1日2回も触るのはどうかと思って、布で拭くということはしている。
それも聞いたらそれはさすがに嫌がらず、良いよ!と若干上から目線じゃないけれど、そんな風な気がしなくもない返事をいただいた。
そんなこんなで、第1回目のモノとの対話は終わった。
これまでもペンジュラム使って、置く場所を聞いたりしたことはあったけれど、それはあくまで主体が人間の方にあって物の方ではなかった。
今回、自分では良かれと思って作った巾着袋に入れたのに、今度は入れた状態でNOが出たから、初めてモノ自身にどうされたいのかを聞いていった。
当たり前だけど、モノは喋らないから、ここは私のドラえもんのペンジュラムに助けてもらって、モノの声を聞いていく方法を採った。
色々質問してわかったことは、人間の私が良いと思うことと、物たちが思う良いことは違うということ。
普通に考えたら、巾着袋に入れてクローゼットの中に保管が筋だと思う。
でもそれは私の感覚で、モノの気持ちじゃない。
モノにはモノの気持ちがあって、私は今回の対話(?)を経験するまでそんなこと考えたこともなかった。
だけど、色々とモノに聞くのは面白かったし、これは他の物たちにも応用できるとわかり、これからは物たちの声を聴いていこうと思ってる。
私にはもはや趣味みたいな話で、実際にモノとやり取りした時は楽しかったし、そして人間の私には考えも及ばない今回の保管方法を目の当たりにして、非常に斬新で奇想天外だった。
これはモノの声を聴かなきゃわからない。
ということで39歳になった日の夜、私は新しい趣味を見つけた。
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