2018年6月30日土曜日

あの夏の日から1年

この1年ものすごく楽しかった。

色々ありすぎて笑えないこともたくさんあったけれど、やっぱり楽しいは楽しかった。

1年前の6月29日はとても暑い日だった。

暑くて暑くて汗が止まらないような日だった。

そんな日にドラマが起こった。

私はある意味とても無防備だった。

今その始まりの瞬間を思い出そうとしたけれど、どうにも思い出せない。

その人は私の名前を1回しか呼んだことがないから、その時は名前さえ呼ばれていない。

しかも私はへんぴな場所にいた。

私には不意打ち過ぎたから、その人が何て言ってきたのか、言葉がさっぱり思い出せない。

名前は呼ばれてないから、本当に物を差し出されて使って下さいとかだったのかな。

楽しさのかけらもなかったその作業が突然光を帯びた。

早く終われ、早く終われと念仏のように心の中で唱えながら作業をしてた私だったけれど、その瞬間から全く別の次元に飛んで行った。☆༄

突然色んなことが恥ずかしくなったのと、ふと私の今の格好ってどんななのかが気になりだしたのと(気になったところで変わらなくても)、そして本人を探してガン見するわけにもいかなかったから、私はチラチラと足元を確認するようになった。

黄色の蛍光のような色のスニーカーはとても目立っていた。

そしてスニーカーの足の向きを見て、今なら見ても大丈夫!と思ったら顔を上げて相手の姿を目で捉えていた。

よく考えたら、私はその人の後ろ姿とか横からの姿とか、そんなんばっかり見てたなと思う。

正面は本気で恥ずかしくて見れなかった。

見たかったけれど、見れなかった。

たまに私の座ってる位置から、とても良い具合に正面の顔が見える時があって、ここぞとばかりに見てた。

相手は他のことをしてるから私の視線なんて気付かないだろうことを利用して、見放題だった。

何がどうしたらそんなにも澄んだ目ができるのか、どうしたらそんなにもキレイで真っ直ぐな目を保てるのか、私には不思議でたまらなかった。

私が色ボケしてるのではなくて、本当の本当にキレイな目をした人だった。

ついこの間、東京でヒーリングを受けた時にしみじみと思ったことがある。

ヒーリングの部屋というのが6畳ぐらいの狭さで、昔の建物だから天井も低かった。

そこに施術用のベッドがあって、書き物用の学習机みたいな机があって、あとは角に一脚の椅子とあとはキャスター付きのローテーブルみたいなのがあった。

スッキリとはしていたけれど、とても狭かった。

30代前半の男性で、いくら相手は既婚者とは言え、いい年した男女が同じ部屋にいるんだ、と思った瞬間があった。

それを思った時に真っ先に思ったことは、全くときめかない自分自身の心の中だった。

そもそもヒーリングメインで行っているし、その日はヒーリング関係のことであまりにも情報が満載過ぎて、そんなことをのん気に考えてる余裕もなかったけれど、一瞬だけそのことが頭をよぎった。

と同時にもし○○さんだったらどうだったんだろう…なんて考えたら、とんでもない方向に思考が飛んでいきそうだったからすぐに止めた。

そして思った。

○○さんというのは、それがたとえ5メートル以上離れていようが、ただその人が同じ空間にいるだけで私はものすごくドギマギしていたこと。

一度なんかは入口のドアを両方向から同じタイミングで開けた時があって、私はものすごく驚いたし、心臓が飛び出るかと思った。

相手も「うわっ」て完全に驚いた声を出していたけれど、私は単に驚いたんじゃなかった。

まさかその人が扉の向こうにいるなんて想像もしてなかったから、いきなり目の前に現れて、それもものすごく近くに現れて一気に緊張した。

コピー機とか仕事のファイルが収まっている場所とか、その人が使うタイミングと私が使いたいタイミングはしょっちゅうぶつかり合ってた。

私の意識の問題かもしれないけれど、他の人たちとはほとんどかち合わなかったけれど、その人とのかち合い率は半端なかった。

しかもその人は私と違って、しょっちゅうそうした周りにいるわけじゃなかった。

にも関わらず、やたらとタイミングが同じで、でも私は本気で恥ずかしかったから、近くに行けるとわかっていてもわざとタイミングを外してた。

恥ずかしかったし、近づくのが怖かった。

近寄ってはいけない、そんな気持ちもあった。

だから、その人がいる時間というのは、ずっとエンドレス私はドキドキしていたし、例えば最初いなくても途中で出先から戻ってくる時なんか、その人が帰ってきた瞬間から一気に心臓がバクバクしだして毎回大変だった。

その人は基本静かにさーっと戻ってくるから、一度は帰ってきたことに全く気付かない時があった。

私はキャビネットの扉で半分隠れていて、でも妙に何かを感じるなぁとは思ってた。

まさか帰ってきてるとか?と思ったけれど、その場所からその人の位置を確認したら明らかに不自然だから、私は確認したかったけれど確認しなかった。

そのキャビネットでの仕事が終わってパッと見たら本当にいて、ビックリした。

いつからいたのかはわからない。

私がまさか帰ってきてるとか?と思った時も、ふと人の気配を感じると思った時だから、帰ってきてすぐのことなのか、それとも大分経ってからなのかは分からなかった。

本当に静かだったし、キーボードも叩いていなかったから余計とシーンと静まり返っていて、だから私は気付かなかった。

一事が万事そんな風だったから、もしその人がその狭いヒーリングスペースにいたら、もうヒーリングどころじゃないなと思った。

当たり前だけれど、異性だからと言ってドキドキするわけじゃない。

現に私はヒーリングの時もその後のガストでのお茶タイムも全くときめかなかった。

仮にそのヒーラーさんが独身でフリーでもときめかなかったと思う。

その彼の服装は私がとても好きなスタイルで、そしてその人にとても似合っていた。

その人の顔や雰囲気も好きだったし、本当に人の良さそうな感じも良かった。

だけど、はっきりとわかる。

私はその人を男性として見ていない。

人として見ている。

だから顔でも服でも好みと言っても、それは単純に私が普段から好きこのむ人種のグループとても言えばいいんだろうか。

だからときめかないし、何とも思わない。

なのにあの人は何なんだろうと思った。

いるだけであんなにドキドキさせるなんて、しかも近寄りがたくていつも遠くにいたけれど、それでもドキドキしてた。

話しかける時なんて、この世のものとは思えないほどに緊張していた。

平常心、平常心…と自分に言い聞かせるようにしてた。

口を開いて声を出す時も、その出す第一声の時に変な力が入ってないか、声が上ずらないか、そんなことを気にしまくっていた。

そうしたことの最初のきっかけが1年前の6月29日だった。

そしてその日から私の生きる世界、目に映る世界が変わった。

ガラリと雰囲気が変わって、色彩がものすごく濃くなった。

そこを流れてる空気も濃密になった。

私の見ている世界が、生きている世界が変わった。

一気に生命力に満ちた時間と風景が広がった。

あっという間にその人は私の世界からいなくなった。

わざと避けるようにしてたコピー機の前とか、その人のゴチャゴチャした机まわりとか、何もかもがなくなった。

1年経った今はもっと何もなくなった。

何もないけれど、その人は私の中にずっといる。

何がなくなっても、ずっとずっといた。

いつどんな時もいて、今も普通にいる。

悲しいことも叶わないこともたくさんというかそれが9割を占めているけれど、それでも私はこの1年と〜っても楽しかった。

こんな風に誰かにドキドキして、その人の毎日の中に一緒にいられるのが嬉しくて(正しくは同じ場所にただいるだけ)、そんな時間がとても大切で大切で仕方なかった。

時間に空間に存在に全てに愛おしいと感じてた。

理屈も何もない、本当にただただ感じてた。

言葉にできない気持ちばかりだった。

それは今も変わらない。

その人とはどうにもならなかったけれど、私の心のお守り的存在には変わりない。

そうやっていつの間にか1年が過ぎていた。

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