ひょんなことから知ったお店だった。
1ヶ月位前にお酒を飲まない友達と夜ごはんを食べようと約束した。
お酒は飲まずにおいしいごはんを食べれるお店をネットで検索した。
検索している時に、たまたま見つけたカフェだった。
実際に行った人がブログにアップしていたのだけど、とにかく坂道の途中にあって、
住宅街の中に「え!?これがカフェ!?」という感じで入るのもためらわれる、
でも入ってみるとオーナーさんが素敵で飲み物スイーツ両方おいしいとあった。
メニューは、飲み物単品(3種)か、もしくは手作りのケーキセット(3種)のみだけど、
これがすっごくおいしいと書いてあった。
しかも週に3日、13~17時しかオープンしないお店らしい。
場所も、同じ地下鉄沿線上のうちから数駅先のところだった。
友達との夜ごはんには使えないにしても、いつかは行こうと思っていて、
それがようやく昨日実現となった。
駅の名前は知っていたけれど、一度も降りたことのない駅だった。
地上に出て、すぐに坂のアップダウンが激しい町だというのはわかった。
なぜなら、駅そのものも坂の途中にあって、下るか上るかの選択肢しかない。
とにかく平らな道がない。
しばらく歩いていくうちに、既知感を覚えた、この場所知ってるって。
なぜだろう、初めて歩く道のはずなのに、知っている感覚。
途中、何百はあろうかという大型霊園の脇を通り過ぎ、小さなお寺兼住宅を見た時に
ようやくそこがどこなのかわかった。
駅から歩いてきた道はたしかに初めての道ではあったけど、途中でここ知ってるかも、
と思ったところは、過去に仕事で来たことのある場所だった。
当時は別の方向から来たから全然一致しなかったけど、確実に来た場所だった。
場所は雰囲気のある街並みで好きだけど、当時仕事で来た時は心身共に余裕がなく、
何もかも楽しめずにいた。
ましてや、平日の午後にのんびり電車に乗ってお茶に出掛ける、なんて夢に抱くことすら
できない位の状況下にあった。
いつからオープンしていたお店なのかはわからないけど、わたしはそこも確実に歩いた道で、
あぁ今このタイミングだから出逢えるお店なんだとしみじみ思った。
そして、過去の色んな苦い思い出が、今新しい思い出に変わろうとしている、
そのことにもやたらとときめいた。
入口のドアを開けると、さらに2つドアがあって、どこを開けていいのかわからなかった。
とりあえずopenって手書きの木の札が出ていたから、声のするドアの方を開けた。
先客2人かと思いきや、1人はマダムのお友達で、もう1人はオーナーのマダムその人だった。
「めったにお客さん来ないから、ふふふ」と笑いながらわたしを出迎えてくれた。
後からふたりの話を盗み聞きして、マダムが60代後半とわかった。
最初に印象に残ったのは、マダムが着ていた白い麻のワンピースだった。
冬に白い麻のワンピースというのが、全然寒そうではなく、むしろ温かみを感じた。
白髪交じりの髪の毛はおだんごにして頭のてっぺんにのせられていた。
背は低めでぽっちゃりしているけど、上品だ。
ここ最近のトレンドのナチュラルな服を上手に着こなしながらも、気品がある。
気品がありながらもマダムの友達と話す時は、ばりばりの名古屋弁丸出しだ。
その色んなギャップがとにかく可愛らしくて、マダムを見るためだけに来ても損はない位の
素敵なマダムだった。
フルーツタルトと紅茶をいただいたのだけど、タルトは素朴なタルト生地にフレッシュな果物が
わんさか載っている。
紅茶はスープボウルかと思うようなでかい器に入ってやってきた。
こちらもとても丁寧に淹れられた紅茶だというのは飲んですぐにわかった。
両方たっぷりの量があるのにそれで500円という、もっと取ってもいいんじゃないかと心配に
なるようなお値段だった。
部屋の明かりとこだわりの窓の作りのおかげで、木漏れ日が入るごとに部屋の雰囲気が
がらりと変わる様も見ていて飽きなかった。
同じ場所にいて、異空間に旅したみたいだった。
お金を払ってさぁ帰ろうと思ったら、マダムが奥にアトリエのような小さな小屋があるから
良かったら見て行ってね、と言ってくれ奥の方にも行ってみた。
そこは「アトリエ」に相応しい、マダムこだわりの場所になっていた。
裁縫をする人で、その裁縫もものすごくセンスが良い。
麻のワンピースを着こなすだけあって、裁縫の作品もシンプルな色と布の素材を上手に
組み合わせていた。
細かい小物も至る所にセンス良く飾られ、これまたセンスの良い暮らしの雑誌や小冊子が
数か所に分散されて置かれていた。
あぁこれわたしも雑誌で見て真似したい!と思った日用品の置き方も目に入った。
どこからどこまでも素敵な場所で、それを生み出しているマダムそのものもとっても素敵で、
こういう年の重ね方をしたいと心底思った。
先日も、もっと年上のおばあさんマダムがやっている小さな珈琲屋に行ったのだけど、
このおばあさんマダムもとても素敵だった。
マダムもおばあさんマダムも、白髪が増えしわが増えても、それを大きくカバーする素敵な笑顔、
それも作られた笑顔ではなくて何十年の積み重ねで出来上がったきれいな笑顔の持ち主だ。
どんな風に年を重ねたらあんな風になれるのか、聞いてみたい衝動に駆られる、
そんなお二方だ。
素敵マダムたちとの出逢いのおかげで、過去の思い出は新しい思い出に書き換えられ、
そして目標にしたい大人の女性像も一緒に手に入れた。
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