2015年4月4日土曜日

ゴリラのヒント①

学習塾に勤務していた時、とてもお世話になった恩師のゴリラ。

(ゴリラのことは、『ゴリラのぶりしゃぶ』にも書いた)

なぜゴリラなのかはわからなかったけど、とにかくゴリラの教室では、

幼児から高校生まで、男女問わず、なんだったら保護者まで「ゴリラ(先生)」と呼んでいた。

ゴリラは、普通の会社で言うならかなり上の役職に就いてもおかしくない立場だったけど、

本人の希望なのか、ずっと現場の人だった。

現場何十年という経歴だけあって、その洞察力や包容力、人間力が半端なかった。

会社は大嫌いだったけど、ゴリラとの縁は本当にありがたかったし、

あの会社に入らなければ出会えなかった人だと思うと、それだけでも入って良かったと思う。

入社して数ヶ月後、新入社員の人たちが4月に入ってきたのに合わせて、

ゴリラは毎週水曜日の朝1時間だけ「勉強会」なるものを自主的に開いた。

ゴリラいわく、毎年恒例の学習会らしく、誰でも参加自由、

学習面でわからないところを質問してもいいし、自分が担当している教室で困った事例があれば、

それを相談してもいい時間という会だった。

最初こそ数人いたけど、1ヶ月もしないうちに、わたししかいなくなった。

毎週毎週ゴリラとマンツーマンで学習会だった。

当時月に1日休みがあるかないか、朝も早く7時過ぎに家を出てその日のうちに帰れたら良い、

そんな生活の中で、ゴリラの勉強会だけは何が何でも体調整えて行っていた。

ゴリラみたいな大人に出会えたのは本当に奇跡的で、

毎週のごとく退職願を当時出していたわたしに(ゴリラは直接の上司じゃないから、別の人に。

でもツーカーで、ゴリラにはそのことがすべてばれていた)、

「おまえみたいな鈍臭いやつの方がこの仕事は本当に合ってる」

とある日ぽろっと言ってくれたことがあった。

わたしの鈍臭さやうまく立ち回れないことも一瞬で見抜いて、

他の研修教室ではことごとくそこを叩かれ、毎回駄目出しされ、「スピードあげて!」

「遅い!もっとまんべんなく色んなことに目を配って!」と、もう何人の担当者に言われたか

わからない。

なのに、ゴリラだけは、そんな仕事する上で欠点みたいなところを長所とし、

さらにそれがいいんだ、それがこの仕事する上で大事なんだ、と説いてくれた。

まじめに、ゴリラがそう言ってくれなかったら、わたしは多分もっと早く辞めてただろうなぁと思う。

そして、実際にゴリラの教室に2週間近く研修で行かせてもらったのだけど、

教室内で野球をしているところは初めて見た。

行く前に上司から、すごいぶっ飛んだ教室だからとは言われていたけど、本当にその通りだった。

たしかにぶっ飛んだ教室ではあったけど、

そこでどの子どももものすごく伸び伸びとしていたのが最初の印象だった。

うるさい子も静かな子も、みんなありのままだった。

そんなゴリラだったから、ゴリラの教えだけは何が何でも行きたかった。

ゴリラが何を思って何を考えて何をしているのか、もっともっと聞きたかった。

本当にそれだけでゴリラの元に足繁く毎週通った。

そのゴリラから色々アドバイスをもらったし、当時の学習会のノートは今も手元にあるけど、

教えてもらったことの1つで、今頃になってやっと気付いたことがある。


何でわたしはその女の子の話をゴリラにしたのかは忘れた。

その女の子は、2年くらい見た子で、名前をももちゃんとしよう。

1学年200人以上いる学校で、入ってきた時のももちゃんは100番台だった。

そのももちゃん、なんと驚異の快進撃で、学年9位まで順位が上がった。

テストの点数も平均点取れるかな~位だったから、5教科合計が300点届いたり届かなかったり。

最後は450点オーバーを何回も叩きだしていた。

きわめつけは、入学した高校で入試1位を取ったことだった。

この辺りでは、入試1位の子はそのまま入学式の新入生代表挨拶をすることになってる。

それに抜擢されて、入試1位だったことが判明した。


そのももちゃんについて、何をゴリラに相談したのか、それともぼやいたのか、

その辺りはすっぱりと忘れてしまったのだけど、ゴリラにその時言われたのが、

「その子がこれからおまえの自信になり、おまえのヒントになる。

だからよく見とけ。

その子がどうなっていくか、そしておまえがその子に何をしているのか。」

ゴリラはたしかにあの時、ももちゃんだけではなく、わたしが何をしているのかをよく見ろ、

とアドバイスしていた。

でも、当時のわたしには、そのアドバイスの意味はさっぱりわからなかった。

ももちゃんを見るのはわかる。

だけど、なぜ「わたしが何をももちゃんにしているのかを見ろ」と言うのかはわからなかった。

そして、色んなタイプの子が来る塾だったから、ももちゃんの例が他の子に当てはまることもなく、

ゴリラのアドバイスなんかすっかり抜け落ちていた。

退職して3年、ももちゃんを最後に見てからも3年以上経ってる。

今過去の栄光ではないけど、過去に爆発的に人生が好転した人たちをひとりひとり思い浮かべて

何がどういうからくりで好転したのかを一生懸命探ってる。

その渦中に、ゴリラの「おまえがその子に何をしているのか見とけ」というアドバイスを思い出した。

たしかに結果を出したのはももちゃんだし、わたしなんかもうお粗末なぐらいの対応だったけど、

でもたしかに何かをしたわけで、その「何」の部分をずっとずっと考えていた。

それがようやく「何」だったのか自分なりの答えが出て、それもここで書く予定でいたけど、

あまりに長くなったから、また次回書こうと思う。

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