2018年2月24日土曜日

お風呂に入る楽しみ

日が暮れる前の明るい頃から2歳の姪っ子メイとお風呂に入った。

メイはアワアワ(入浴剤)に釣られて、「フミコと入る」となった。

メイはいつも風呂の時間が長い。

大人みたいに発汗作用や血行促進を図るために長風呂になるわけじゃない。

単純にお風呂の中で遊ぶ時間が楽しすぎて、それで結果的に長風呂になる。

昨日一番のヒットは、水中ピンポン&サッカーだった。

お風呂で遊ぶ道具の中にピンポン玉があって(色々あるのは知ってたけどピンポン玉の存在は昨日メイに見せられるまで知らなかった)、使わなくなった小さな木のしゃもじがラケット代わり、そして15センチほどの柔らかいプラスチック製の鳥の人形がサッカーのようにピンポン玉をキックする。

メイはラケット代わりの木のしゃもじでピンポン玉を弾く(はじく)。

私は鳥の足がピンポン玉に当たるようにして、そして反対側にいるメイのところにキックして玉を返す。

メイは時々自分の足を出して、鳥と同じ動きをしてピンポン玉を蹴った。

そんなようなことをエンドレスでやった。

他にもいくつか遊びがあって、メイはとにかく忙しい。

分刻みで動いている。

本来お風呂ってこういう楽しい時間なんだな…と反省も含めて昔の記憶を掘り起こしていた。

子どもの施設で働いていた頃、仕事の1つに子どもたちを風呂に入れることがあった。

入ったばかりの頃私は服を着たまま子どもの入浴介助をしてた。

でも他のベテラン先生たちを見ているとみんな一緒に入っている。

ある時ベテラン先生の1人に、お風呂は一緒に入った方がいいのかと質問したら
「小さいうちって、普通は大人と一緒にお風呂に入るでしょう。ここは家じゃないけれど、せめてそれに近い状況を作ってあげようと思って、それで一緒に入ってるのよ」
と教えてもらった。

探せばどこかにあると思うけど、私が当時の仕事でもらったマニュアル的なものはA4の紙1枚だけだった。

そこに5種類の勤務の流れが箇条書きで書かれていて、だからお風呂当番に関しても「幼児の入浴」ぐらいしか言葉としての説明がなかった。

なんでもそうだったけれど、とにかく全てが予測不可能な仕事ゆえ、マニュアルというマニュアルはなくて、何でもかんでも手探り状態でやるしかなかった。

だからお風呂もそうで、でもあの時に私はベテラン先生に質問して良かったと思う。

なぜなら、異動がある職場で、ベテラン先生たちは本来保育園の園長や副園長にあたる人たちで、そうした上の人たちが丸っと入れ替わった5年目以降、そのポジションとして現場にいるのはペーペーの私が一番の古株になって、私以外は誰も子どもと一緒にお風呂に入ることはなかったから。

新しく来る人からしたら、私1人が人と違う動きをしていて、最後の最後まで誰も私に何でお風呂に子どもと入るのかなんて聞いてこなかった。

唯一人生経験がとても豊富で物事を俯瞰して見るパートさんだけが「本当は武士俣さんがしてるやり方が本来の自然な姿なんだけどね、上の人たちは気付かないんだろうか」というようなことを何回か言ってくれてた。

そうやって理解してくれる人がいてくれたおかげで、私は他の誰もしなくなってからも最後まで子どもたちとお風呂に入り続けた。

ちなみに当時は、パートさんを配置しなきゃいけないぐらいに小さな子たちが多くて、毎回最低でも10人の風呂入れがあった。

この時ばかりは私は少しでも具合の悪い子がいると必死に検温した。

入れずに済むならそうしたかったから (苦笑)。

子どもの具合の心配じゃなくて自分の業務軽減のための検温で、私の場合は一事が万事本末転倒だった。

10人一斉は無理だから、3人か4人のグループに分けて、誰が1番、誰が2番、誰が3番と予め分けて、最初の子たちとはそのまま一緒にお風呂に行って、残りの子たちはパートさんにお願いして交代で連れてきてもらってた。

メイとマンツーマンで入るのとは違って、お風呂場は戦場のようだった。

お風呂はリラックスタイムじゃなくて、子どもたちに髪の洗い方や体の洗い方を教えたり仕上げしたり、終わったら今度は一緒にお風呂に入って少しばかりお話をして数を数えたりと本当に慌ただしかった。

遊びの要素は全くなくて、ひたすら日常のルーティンをこなすみたいな感じだった。

メイといると、当時のことがどれだけいびつだったのかがわかる。

あの時はあの時で全力だったけれど、メイとのお風呂タイムとは雲泥の差になっている。

メイがまだ小さいのもあるけれど、唯一お風呂で違うのは、その子どもたちは体についての質問がたくさんあったこと。

子どもたちもどういうわけかお風呂の中でしかその質問はしてこなかった。

女の人には何でおっぱいがあるの?なんて質問から、どんなに小さな女の子でも赤ちゃんが入るためのお部屋が生まれた時からおなかの中にあるんだよ、なんてことも教えたりした。

この話は女の子たち大好きで、私は毎回毎回この話をさせられてた。

男の子は男の子で面白く、どんなに小さくても体は反応するし、年中ぐらいになると恥ずかしいと思うのか見られないようにしたりする。

でも慣れてくるとそれもなくなって、普通に入る。

慣れてくると今度は男の人特有な感じの質問があって面白かった。

今思い出したことは2つ。

「○○の肌すべすべだね!」と言いながら子どもの肌を触ってたら、「ぶっちゃんのはだはすべすべじゃないね」と私の腕を触りながら返された。

私はそうだねと普通に返したつもりだったけど、その男の子は何を察したのか
「ねぇ、『すべすべじゃない』っていい言葉?」
と聞き返してきた。

嘘を教えてもよくないから
「うーん、そうだね、大人の女の人にそれ言うとイヤがられるかもね」
と教えた。

そうしたらその子は
「まちがえた!ぶっちゃんのはだすべすべ‼︎」
とすぐに言い直して、吹き出しそうだった。

そんなに気を使わなくてもいいのにと思いながら、こうやって男の子は女の人の扱いを覚えていくのかと思った。

なぜならその子の中では、私は松嶋菜々子より綺麗な人ということになってたから(笑)←私はそんなこと教えてないけど、子どもなりに私を喜ばせようと必死だったのはわかる。

またある時は別の年長の男の子にすごくきわどい質問をされた。
「大人の男の人は毛がたくさん生えてるけど、どうして女の人のうでや足や脇のしたに毛が生えないの?」
というものだった。

女の人は処理してるからないんだよ、なんて言いたくても言うのがいいとは当時は思えなかったから、私はそれには適当に相槌を打って終わった。

とにかく体についての質問は絶えず聞かれてたし、子どもたちもこれは裸の時じゃないと聞けないと思うのか、普段はそんなこと聞かれることもなかった。

前に、いとこの子どもたちとお風呂に入った時もそういう質問は一切なかった。

当たり前だけど、その子たちは自分の母親たちとお風呂に日常的に一緒に入っていて、普段とは違う人という意味で斬新でも施設の子どもたちみたいに大人とお風呂に入る体験が極端に少ないのとは違うから、普段のようにお風呂の中で遊んでた。

体や髪の毛の洗い方も本人たちの動きを見て、手伝ってと言われたらしたし、できると言われれば手は貸さず、最後に仕上げしようか?と聞いて終わってた。

当時は何とも思っていなかったけれど、実に面白い体験を仕事を通じてしていたんだなと思った。

そしてメイがいることで、今度はまた違った形で子どもと時間を過ごす。

妹の子どもということでこちらも気を使わなくていいし、メイもメイでおかあしゃんより自由にさせてくれるのを知ってるから、好き放題に遊んだりリクエストをしてくる。

当時は周りに小さな子どもが誰もいなかったから、施設の子どもたちに対しても何の先入観もなく関われたように思う。

お風呂で遊ぶことを知らないまま大人にさせてしまうことを、今少しばかりの後悔に似た気持ちを持ってしまう。

当時はいつどんな状況になっても生きていけるように、生きる力をつけることに何よりも注目してた。

それで良かったと思うけど、もう少し遊びも日常の中に取り入れたら良かったなと思う。

生きる力も大切だけど、その瞬間瞬間を楽しむことも生きていく上でとても大切だと気付いたのは、私の場合ほんの数年前だった。

だから施設で働いてた時はそんなこと考えたこともなければ、お風呂を楽しもう‼︎なんて発想は1ミリもなかった。

子どもたちも私とお風呂に入ることは楽しみにしてくれていたけれど、お風呂で遊ぶということは知らずにいたからそういう楽しみは持っていなかった。

今ならもう少し違う形で子どもたちとお風呂に入るなぁと思う。

これは個人的に感動したことだけれど、1、2年生の頃一緒に入ってた男の子たちは最後5年生になって、お風呂に関してその子たちの成長を感じたことが1つあった。

4年生までは学校から帰ってくると普通にお風呂の戸を開けて私にベラベラと話しかけてきたけれど、5年生になってからは子どもたちの方が察して、子どもたちはお風呂場の戸は閉めたまま、脱衣所から私に話しかけてた。

思春期に入りかける少し前で、絶対に戸は開けなかったし、見てはいけないという状況を察する力を自然と身につけてた。

いつの間にかこんなこと覚えていくんだなと思った。

まだ幼いから普段は平気で卑猥な言葉を大きな声で連発してたけれど、そういう大切なところはきっちりと線引きしてた。

色々やらかしまくりな3人トリオだったけれど、そういう言葉にはできない部分を大切にしてくれる子どもたちだったなと思う。

そんなこんなのことをたくさん思い出せるぐらいにメイとのお風呂タイムは長かった。

メイのお風呂タイムの長さは、私の方が根負けしそうで、最後は大人のずる賢さを駆使してメイに
「お風呂上がってアンパンマンのチョコ食べない?」
と誘い出し、アンパンマンチョコLOVEなメイはすぐにそれに飛びついて、それでようやく風呂から上がってくれた。

妹がいつぶりかわからないぐらいにゆっくりお風呂に入れた!と大喜びしてたから、今日もメイとお風呂に一緒に入ろうと思ってる。

今日もピンポン玉ゲームなのかはたまた別の新しい遊びなのかわからないけれど、また全力で遊びながら楽しくお風呂にメイは入るんだろうなと思う。

そして私はまた最後は姑息な手段でメイを風呂から上げるんだと思う。

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