今の仕事で史上最高に腹が立った日。
仕事中はあれこれ気を紛らわそうとしてもそれでも怒りの炎はメラメラとしていて、終業を知らせるチャイムと共に外に出て自分の車の中に入ってからはさらに抑え込んでいた怒りを爆発させた。
イライラが止まらなかったけれども、とりあえず帰りにコンビニに寄って、Wi-Fiに繋がって本の注文をしようと思った。
今月末までの本の割引クーポンがあって、速度制限がかかった携帯からだとあまりにゆっくりで注文が上手くいかないから、それでコンビニでWi-Fi拾って手続きをしようと考えた。
帰り道の途中にあるコンビニの候補は5軒ある。
私はどこでも良かったけれど、なんとなくあそこかな…と思ったら、ペンジュラムもそこだという。
田舎地域にあるコンビニに寄った。
とりあえず注文を先にして、その後コンビニに寄ろうと思った。
今日は確実にWi-Fiに繋がることが大事だったから、店舗の建物ギリギリのところに車を停めた(そこは大型トラックも停まれるくらい駐車場が広い)。
最初は女の人が隣りに止まっていた。
Wi-Fi接続が上手くいってるんだかいってないんだか、随分とゆっくりだったけれども、とにかく注文することが大事だから気長に待った。
待ってる間も時々仕事の時の怒りが頭をかすめてはまた怒りが再燃していてタチが悪かった。
そのうち、女の人の車はいなくなって、別の白いスバルの車が止まった。
見ようと思って見ていたわけじゃないけれど、運転席の男の人が店内に入るために車から出てきた。
「!」
手元の携帯の画面そっちのけで、その男の人をガン見した。
幸い向こうは何も気付いてないから、見放題だった。
多分初めてだと思う。
イケメン上司と私が勝手にあだ名をつけた人とかなりそっくりな体型の人を見たのは。
背の高さは誤差2〜3センチくらいか、もしかしたら誤差1センチ以下かもしれないくらい、同じだった。
背の高さはまぁ人口全体の割合からしても少なめだと思うけれど、いないわけじゃない。
背の高さだけ取ったら、今みたいに男性9割みたいな職場なら近しい感じの人たちがいる。
だけど、コンビニの男性はそれだけじゃなかった。
肉付きというか体のバランスや体型までかなりそっくりだった。
コンビニ男性の方が太めではあったけれど、それでもかなり近い。
しかも、そのコンビニ男性が腕まくりをしていて、それも作業系の制服でその袖を腕まくりして、手首から肘までのラインが見えた。
筋肉がモリッとしてるところや腕の太さがとっても似ていた。
1人で超感動していた。
これは言っても差し障りないと思うけれど、人生で出会った男の人の中で、その人の腕の感じが私は一番自分の好みで、それだけは初日から数えて何日目ともいかないくらいの時から気付いた。
元々男の人の腕のその辺りがとても好きで、誰彼構わず見てしまう。
男の人が女の人の胸を見るのと同じ感じかもしれない(笑)。
とにかく見てしまうから、ものすごいたくさんの男の人の腕を私は意識的に見てきたけれど、とにかくその人の腕の感じが私の中では自分史上最高の腕の感じ!!!となっていた。
その人の腕の時ほどは感動しなかったけれど、かなり近かった。
歩き方も少しだけ似ていたし、髪型や髪の長さも少し似ていた。
全然別人と知っていても、しばらく私はそのコンビニ男性から目が離せなかった。
中に入ってからはまた注文の続きをしたけれど、しばらくするとまたその男性は戻ってきた。
怪しくならない程度にまたもやチラチラと見た。
今度はさすがにガン見はまずいと思って、チラ見に切り替えた。
やっぱり似ている。
コンビニに入る直前、戸がスライド式だから立ち止まったのか、そうではなく立ち止まったのかはわからないけれど、その時が一番その人の感じと似ていた。
そして、私の目に映る背の高さや体型が私の記憶の中のその人と重なった。
最後の日、最後の瞬間、私と階段のところでかち合ったその人は嫌そうなのか気まずそうなのかしていた。
そのことにはガツンと鈍器で殴られたみたいなショックを受けていたけれど、それとは別に「あー、こんなに背が高かったんだな」なんて思ったのもものすごくよく覚えている。
私の目を見るには、その人は少し視線を下げないといけない。
166から168の間を行ったり来たりする私の身長だと、男の人を見上げることはそんなに数として多くない。
そして反対に自分が見おろされることも少ないから、見おろされる時、キュンとなる。
その感じが実は好きで、その時はそんなこと味わう余裕もないくらい、目の前のその人は怒ってるんだか不機嫌なのかだったけれども、それでもそんな風に一瞬でも目を合わせるために?見下ろすみたいな瞬間は、ちょっぴり嬉しかった。
そして、本当に背が高いんだなぁなんてじっくり思う余裕はなかったけれど、それでも高いと思ったことは頭の片隅にあった。
よくよく考えたら、そんな風に真っ正面からあの近さで立ったままやりとりできたのはその時だけだったかもしれない。
電話があったことを知らせに行ったり、お土産に気付いたかを聞いたり、はたまた入口のドアでちょうどかち合って「あ!」となった時はあったけれど、真っ正面というのとは少しずつ違った。
立ち止まって向き合っていたのは、最後の日の最後の挨拶の時だけだったように思う。
あの時に見ていた背の高さや、少し遠くからその人が立っているのを見ている時の背格好にコンビニの男性は瓜二つだった。
全然別人と知っていても、やっぱり目はその別人男性にやたらと釘付けで、その赤の他人の立ち姿を見ながらその人のこともいつも以上に思い出した。
こういう感じに近かったなぁと思いつつ、よくよく考えたらこの3年でこれほどに体型の近い人には誰にも会ってないって気付いた。
会ってないって変な言い方だけど、あの背の高さと体型の人って本当にいないんだなと思った。
コンビニ男性が店の中に入る時、歩く姿を見えなくなるまで見ていた。
歩き方は似ていなかった。
っていうか、イケメン上司のような空気を放って歩く人なんてこれまで一度も見たことがない。
ちなみに「イケメン上司」の名にふさわしい、本当に歩き方もイケメンだったりする。
歩き方までプレゼントして、神様は1人の人間に与えすぎだと私なんかは思った。
そんなこんなの時間を過ごしているうちに、怒りが静かに引くのがわかった。
本当に超超超イライラモヤモヤしてたのに、あの感覚がスーッと引いているのがわかった。
もちろん、コンビニ男性が誰かなんて知らないし、イケメン上司もそんなことに自分が使われてるなんて論外だと思う。
だけど、思ってもみない方法で、私の怒りは確実に引いていった。
ずっとずっとイライラモヤモヤ、どうやってもそれが収まる気配がなかった私に突然その瞬間はプレゼントされた。
ペンジュラムがそのコンビニを推したのも、本の割引も、速度制限のかかった携帯の通信状況も、Wi-Fiの関係で車を停めた位置も、どれもこれも全てが完璧に揃っていた。
本の割引は今月いっぱいまでだったから、どうでも今日でなくても良かった。
だけど今日手続きをしようと思ったし、なんとなくそのコンビニだった。
すごい絶妙な感じに驚いた。
そしてイケメン上司は相変わらず、色んな形で助けてくれる存在だなぁと思う。
本人はそんな気がさらさらないと思うけれど、それでも私が本当の本当にイライラしていた時に熱冷ましのごとく怒りを冷やかしてくれて、怒りから離れられたことはとっても大きかった。
また家に帰ってからも怒りは再燃はするものの、その後何度もイケメン上司に似た背格好の人をコンビニで見て自分の怒りが引いたことを思い出して、自分のおめでたさとこの自動反応システムに心底感謝した。
そして、そういう怒りを鎮める薬みたいなものを持てている自分の幸運も思った。
こんなすごい薬を持てるなんて、最強!!!と思った。
まさかの特効薬だった。
もう1つ、想像している以上に詳細によく憶えているんだな…と感動した。
背格好そっくりな人はおそらくこの3年の間で初めてだったと思うけれど、それにしたって私の中の感知器は当時とほぼほぼ変わらないと思う。
仕事のことも前の日の夜ごはんも平気で全て忘れるけれど、イケメン上司にまつわるあれこれは今もこんなに健在でいつでもどこでも思い出せるくらいによく覚えていることに驚いた。
本当に感動するくらい、よく覚えていた。
しかも体に毒なくらい怒り狂っていたタイミングの時に、コンビニ男性は現れて私の記憶を一気に覚ました。
「見おろされる時、キュンとなる。」
この内容、なんかしっくりこない…と思って、あれから色々分析してみた。
背の高い男友達を何人か思い浮かべて、はたまた職場の背の高い男性たちを思い浮かべてみた。
絶対に対峙して喋る時もあるけれど、そうすると自動的に相手は私を見下ろすことになるけれど、別にそういう時はキュンとならない。
キュンとなったのは、あくまでも相手がイケメン上司だったからだと気付いた。
その時はそれ以上に北極並みにそこだけバキバキと氷が張ってそうな冷たさに心が奪われて色々それどころではなかったけれど、そして目を見られた時もこれまた目には本当に冷たさを宿していて、そこにプラスして棒読みみたいな相手の挨拶と、とにかく負のオーラ全開すぎて、見下ろされてキュンなんてのはようやく今くらいに落ち着いてから味わえるくらいのものではあったけれど、あれはよくよく考えたら誰でも彼でもそうなるものとは違っていた。
記憶がほぼほぼないけれど、イケメン上司の後任の後輩くんはさらに背が高く、そして最後おしゃべりできるくらいになったから、立ちながら話をしたこともあったんじゃないかと思うけれど、何一つその場面が思い浮かんでこない。
自分が最後の日なんて、最後の仕事にイケメン上司の名前に触れることが舞い込んできてテンションが上がったことしか覚えていない。
もういないのに、たまたまイケメン上司時代の書類に当たって、それが有終の美を飾る仕事になった。
それは覚えていても、後輩くん含めて周りにどう挨拶したかなんて記憶にない。
こうやって他と比べて書き出すと、イケメン上司との時間だけが本当の本当に別格だったんだとわかる。
今一番日常的に近くにいる背の高い人として部長がそうだけど、あまりにも風格がありすぎて、機嫌の悪い時に目が合うと悪い意味でドキッとする。
他にも背の高い男性は何人かいるけれど、よくよく考えてドキッとはしていないし、心の中が盛り上がる要素も全くない。
イケメン上司と実際にあった場面と同じ場面を他の背の高い人と体験することになったとしても、私は無反応な気がする。
イケメン上司だからこその反応だったんだと今さらながらに気付いた。
目の前の景色は、北極圏であらゆるものが氷の塊となって凍っているくらいの極寒状態にも関わらず、イケメン上司が一瞬だけ私の方を見るために目を向けて、だけど身長差があるから目を下の方に下ろす、その場面はギュッと心が硬くなっていたものの、ほんのわずかだけ心は喜んでいた。
今思うと凄いことだと思う。
一瞬の中で色んな感情を味わうなんて、生きている中でそんなにはないわけで、だけどあの時私は心がボキボキになりながらも、もう会えないことへの強烈な感情に押されていても、それでも目が合った瞬間には違う感情も抱いていた。
「しあわせ」と呼べるかどうかはわからないけれど、ほんのりと心の中にはしあわせに近い気持ちも感じていたんだろうなぁと今だから思える。
最後に不謹慎なことを書くけれども、ここ数日とっても残念に思ったことを書く。
俳優の伊藤健太郎くんがひき逃げで逮捕された。
2ヶ月とか3ヶ月とか前だと思うけれど、現場での素行がイマイチで、足元をすくわれなきゃいいけれど…みたいなことをネットニュースの週刊誌で書かれていたものを見て、そうじゃないといいなぁと思った日があった。
そのまさかが本当のことになったのが数日前。
今回の逮捕は、内容云々よりも彼がテレビに出れなくなることの方が私にはうんとうんとショックだった。
伊藤健太郎くんを初めて見たのは、朝ドラ『スカーレット』だった。
主人公の女性陶芸家きみこの大きくなった息子「武志(たけし)」役として後半になって出てきた。
初めて武志を見た時、私はドラマそっちのけで画面越しの武志をまじまじと見た。
最初見た時、大真面目にイケメン上司がテレビ画面に映っているのかと思ったくらいに、武志役の彼は似ていた。
彼は色んな役柄をしていて、役柄ごとに髪型や表情が変わるから、すべての役に当てはまるわけではないけれど、少なくとも武志役の時は本当に親戚か兄弟ですかばりの、背といい、体型といい、顔といい、とても似ていた。
指も含めた手の形まで似ている。
声もすごく似てるわけではないけれど、声の高さや透明感は似てる方だと思う。
だから武志が色んな表情をしたり、ごはんを食べたり、病で苦しんだり、とにかく一挙手一投足を私は穴が開くほどに見ていた。
私が惚れ惚れとした腕の形はイケメン上司の方が絶対的に良くて、腕はイマイチだな、なんて何様評価かわからないようなことまで思って見ていた。
その後、令和版東京ラブストーリーがネットテレビか何かで放送されることになって、伊藤健太郎くんは織田裕二が演じたカンチ役で出た。
それは見てないけれど、たまたまその広告なのかCMなのかで彼を見かけて、スーツ姿の彼を見て、イケメン上司もスーツを着たらこんな風なんだろうか?と1人で想像を広げた。
伊藤健太郎くんのファンではないけれど、彼の動く姿を見てはイケメン上司を彷彿させるものだから、彼が出ている番組をたまたま見たらそのまま見てしまっていたし、最近は毎週木曜の朝6時50分くらいに、どこの放送局か知らないけれど、映画を紹介する部分を彼が担当していて、それはここ数週間すかさずチェックして見ている。
彼が見たいというよりも、イケメン上司を重ね合わせて見るその時間が私には一種の癒しと愉しみみたいなもので、それで見ていた。
見ていても「あ!今の表情似てる」とか「これは似てない」とか、まったくもって見方がおかしいのは自分でもわかっていたけれど、それで朝の出勤前に心が和むんだからそれでいいだろう!と開き直って見ていた。
こういう事故の場合、芸能界に復帰できるのかどうか知らないけれど、復帰するのはかなり難しいと思う。
私は伊藤健太郎くんがあと15年くらいして30代後半になる頃、どんな面影になるのかとっても楽しみだった。
当時のイケメン上司と瓜二つみたくなるかもだし、そっくりにはならなくても系統が似ているからそこそこ楽しんで当時を思い出せるかもしれない…、とかなり期待していた。
その頃私は57歳くらいなんだ…と知って、自分の年齢にひっくり返りそうになったけれど、それでも還暦目前にそういう楽しみを1つ持てるのは、未来の自分に1つ楽しみをプレゼントできるみたいで、いいなぁと思っていた。
だから本気で伊藤健太郎くんの将来の姿を見るのが楽しみだった。
動機も理由も色々不純すぎるけれど、本当に私のひそかな楽しみの1つだった。
そんなこんなで、今回の逮捕というかテレビにしばらくは出れない彼を思うと、ものすごくショックだった。
木曜の朝の楽しみやバラエティに出ることもないんだろうなぁ…ってなると、ますます残念でならない。
伊藤健太郎くんとイケメン上司は全くの別人だし、1人は画面の中の人、もう1人は心の中の人で、私とは全く接触のない2人だけれど、それでも元気がもらえたりウキウキしたりほっこりしたり、そういうものをプレゼントしてくれる人たちには変わりない。
不謹慎すぎるのは百も承知だけど、伊藤健太郎くんがこれから先またテレビ画面に戻ってこられたらいいなぁと思う。
せめて私が還暦間際になる頃には、彼がもう一度テレビで活躍しているといいなぁって思う。
関係ないけれど、今回様々な媒体で報道が為されているのを見ていた中で、伊藤健太郎くんを「甘いマスク」と表現していた人がいた。
イケメン上司もいわゆる世間一般では「甘いマスク」と呼ばれるタイプの人なんだなぁなんて思いつつ、本当にどうして私はそういう高嶺の花みたいな人に時間が欲しいだのごはんに行こうだのと言ったんだろ?と思った。
ドラマの中でも私生活で彼女と呼ばれる人も、伊藤健太郎くんの相手は可愛いか綺麗な人ばかりで、それを見て私は「本当、勘違いも甚だしければ、立場も考えずによく動いたな」と思った。
イケメン上司の好みなど1つも知らないけれど、画面の向こうを見て、イケメン上司に似合う人を想像しながら心がチクチクした。
ちなみに武志は恋愛がとてつもなく不器用で、そういうのを見てそこだけはイケメン上司も同じかもしれないと思って見ていた。
もはや何の話をしてるのかわからないくらい収集がつかない内容になってきたけれど、伊藤健太郎くんのいつかの復帰を私は自らの楽しみのために願っている。
そして、57歳の自分を思った時に、イケメン上司との間にあった色んなことを、私は優しい目で見返すことができるくらいの自分になっていたいと思った。
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