2016年4月25日月曜日

心地良い音色

夜中布団の中で小説を読んでいたら、外から聞こえる音が一段と大きくなった。

いつから聞こえていたのかはわからなかったけれど、よく耳を澄ますとカエルの鳴き声に似ている。

包囲5キロは完全なるコンクリートで構成されている街に住んでいたら、カエルとは無縁だ。

もちろん田んぼも畑もない。

あったとしても、とっても人工的な家庭菜園がある位だ。

そもそも庭の面積が狭すぎて、畑などやれる程の土地持ちの人は近所にいない。

だからその何だかよく知らない音がカエルの鳴き声に、しかもおたまじゃくしがカエルになった位の

一番うるさくなるカエルの大合唱のような音に聞こえるのがたまらなく不思議で仕方なかった。

近所は住宅が密集していて、夜中はほとんど音がしない。

たまに酔っ払ったグループの人が通りかかると、会話が聞きとれそうな位に静まり返っている。

そのカエルの鳴き声のような音がどこから来ていて、そしてどうしてそんな風に音がわたしの頭の

中では書き換えられているのかわからなかったけれど、聞いていて安心する音だった。

新潟の実家のすぐ隣りには田んぼがある。

だからカエルの鳴き声は、毎年時期が来れば嫌でも耳にする。

そのよく見知った音をただただ聞くだけで、気持ちがおだやかにそして何とも言えない安心感の

ようなものを感じて感動した。

ただ小説があまりに面白すぎてベランダに出て音を確認するほどの余裕はなかった。

キリのいいところで確認しようと思いそのまま読書を続けていたら、「さぁちょっと出てみようか」と

思った時には丁度その音が消えてしまった。

そしてその後には一切そのカエルの鳴き声らしい音は、外から聞こえなくなった。

何だったのだろう?と思う。


今朝は今朝でまた面白い音を耳がキャッチした。

今近所では3つの大きな工事が同時進行している。

1つは水道管の入れ替えのための道路工事。

これが音としては一番家から近いもの。

2つ目は、距離で言えばコンビニ1軒分位先のところのアパートの外壁補修工事。

多分だけど、そのアパートの外壁補修工事は予定になかったものだと思う。

数日前、暗くなってからそのアパートの脇を通ったら何人もの作業員が応急処置的な機材を持ち

込んで、とりあえず最低限の安全を確保するためにライトアップさせて作業していた。

昼前までは普通だったのに。

そんなこんなでその夜以降、毎日外壁工事が行われている。

3つ目は、50m程先にある某会社の本社建替工事。

「本社社屋」と看板にあったけれど、多分東海地区ではそこそこ大きい会社だと思われる中、

名古屋の繁華街やオフィス街からは離れたこの地にそんな本社を建設するのが不思議。

その3つが稼働しているから、とにかく方々から色んな音が耳に届く。

今朝の音は、何か重機を使っている音には間違いなかった。

だけどその重機が醸し出す音というのが、夏祭りなんかで演奏される日本古来のたて笛の音色に

そっくりで、そしてたまたまなんだろうけれど旋律までも生み出し、聞いていて心地良かった。

当たり前だけど、工事であっても祭りではないわけで、だけど音だけを切り取ったら完全に祭りの

笛の音色で、そのあべこべな感じも寝ぼけた頭には面白おかしく映っていた。

しゃきっと目覚めると、もうそのたて笛のような音色はなくなっていて、多分使用する重機が

変わったのだろう、単なるうるさい工事の音だけが残った。

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