2019年6月19日水曜日

紫陽花日和からのお月見デート


















梅雨の時期の久しぶりの晴れ。

「これは紫陽花日和!」と思って、早速出かけることを即決した。

新潟に初めて戻った年、どこか気が休まるところに行きたくてペンジュラムに案内をお願いしたら、ペンジュラムがiPhoneのマップの上で「ここだよ」と教えてくれた場所だった。

その近くなら何百回と通ったけれど、ペンジュラムが指す場所は小道に入って少し行くようだった。

何があるのか知らなくて、とりあえずあてが外れてもいいから行こうと思って行った。

着いてみると、そこには満開の紫陽花が咲き誇っていた。

「あじさい公園」っていう名前じゃないんだけれど、私の中ではその日以降「あじさい公園」になった。

あれから毎年この時期になると、あじさい公園に繰り出す。

10日ほど前の時はまだ早くて三分咲きみたいな感じだったから、今日はいける気がした。

その市に住んでいるSさんに連絡を入れた。

一緒に行きませんか?って。

そうしたら、「てへっ」という雰囲気は微塵も感じられないプロレススタンプ付でOKの返事をもらった。




行く前に「そうだ!」と思いついた。

Sさんとは職場が一緒だった。

私たちは当時から、有益な情報の交換に目がなかった。

美味しい店とか、美味しい食べ物とか、基礎化粧品の良かったものとか。

男の人の萌えポイントとか、イケメン行動とか、仕事中なのにそんな話でよく盛り上がった。

Sさんに何度か紹介して、さらには本当は仕事最終日に差し入れしたかった美味しいもなかの存在を思い出して、今日なら行ける!と思って、行く前にそのお店に立ち寄った。

ドキドキした。

店主のおじさんが亡くなったのがこの1、2年。

色んな家族の物語があって、最終的に3人の子どもの中の1人、娘さんが継ぐことになった。

本当は息子さんが継ぐ予定だったけれど、愛の事情から予定が大幅に変更されて、おじさんが亡くなる何年か前から娘さんがお店に入ったと、何かと情報通の母親が言っていた。

このお菓子屋さんには子どもの頃からたくさんお世話になった。

もなかにあんこを詰める時の動きは今でも思い出せるぐらいに何回も見せてもらった。

おじさんおばさんの2人で切り盛りしていて、そこに遊びに来ている私たちに合わせて少しすると休憩を取ってくれて、その時は缶切りで刺しただけの小さな穴を開けたコンデンスミルクの缶からかわいいコップにコンデンスミルクをコップ底に注いで、上からお湯を注いでどうぞと手渡してもらっていた。

子どもの目線では、給食室にありそうな大きな釜にいつも「大きいなぁ」と感じながら、調理場の適当な通路の隙間に椅子を置いて、そこに腰をかけて甘くておいしいコンデンスミルクを喉に流し込んだ。

家は建て替えられたようだけど、お店は昔のままで、お店から見える調理場もそのままで、懐かしい気持ちでお店の中に入った。

娘さんには小さな頃少しだけ会ったことがあるけれど、すでに成人したてみたいな娘さんはすごい大人のお姉さんに見えて、私の中での「24歳」のイメージは、その娘さんたちの姿だったりする。

還暦手前ぐらいなのか、何歳なのかはわからなかったけれど、年齢の上がった、でもおじさんと同じ顔をした娘さんがいた。

気を抜くと泣いてしまいそうだった。

私は自分が何者かは名乗らず、もなか2つだけをお願いした。

遠いのか近いのかよくわからない距離感の記憶と共にもなかを手にして店をあとにした。




余裕を持って出かけたはずだけど、到着はギリギリになった。

Sさんは先に着いていて、約束通りトイレ前にあるいくつかのベンチの1つが空いてるはずだからそこに待ち合わせしようと私から提案して、そしてその通りの場所にSさんは座っていた。

さりげにこういう待ち合わせが私は好きだったりする。

2人とも場所を知っていて、でもその場所は広いから何か目印になるものを約束の場所にする。

その時に、2人ともがその目印となる場所を脳裏に思い浮かべて「わかったわかった」なんて言うシーンは嬉しくなる。

会う前から共有する何かがある、ただそのことだけが本当に特別に思えて嬉しくなる。

久しぶりに会ったとは思えないくらいに、私の知ってるSさんがベンチに座っていた。

私に気付くと知ってる笑顔を思い浮かべて、「わぁ〜久しぶりだね〜」と2人で言い合いながら、とりあえず庭園の中を歩き始めた。

天気が良かったおかげか人がいつもに比べてたくさんいた。

Sさんとは多分1年ぶりぐらいに会っている。

時々自分のおしゃべり度合いが嫌になる時があるけれど、Sさんがうん、うんと真剣に聞いてくれて、とても気持ち良く色んな話ができる。

オカルト満載な話さえも「ブシ俣さんの話はいつも不思議な気持ちになる」と言いながら興味を持って聞いてもらえる。

最近発見したペンジュラムと占星術の組み合わせの方法を、東京にいる妹の知り合いが新潟でミュージカルの公演をするからと誘ってくれて行ったら車をどこに止めていいかわからなくて、近くにTSUTAYAがあると知って止めて、ついでに店内を覗いたらダウジング辞典を見つけて、パッと開いたページにその方法が書いてあった、と説明した。

本当に話を盛ってるわけではなくリアルにあったことだと言ったら、「本当に毎回ビックリするけれど、本当にそうなんだもんね〜、本当にそういうことってあるんだね」ってとにかく真っ直ぐに私が話したまま、ちゃちゃも入れずに聞いてくれる。

聞き上手な人代表だといつも思う。

私たちは奥まったところにある小さな吹き抜けの休憩所のベンチに座って話した。

飲み物は各自持参で行こう!と言っていたから、私は冷たい麦茶とアイスコーヒーをそれぞれ水筒に入れて持って行った。

Sさんもお茶の水筒を持参してきた。

そして各々が一緒に食べようと思って準備したおやつの物々交換をした。

「“〇〇の家”(店名)で、あそこおいしいお菓子が置いてあるから買おうと思ったら今日お休みで、だから☆☆屋に行ったら、このシュークリーム見つけたんですよ〜」

そう言って、白い紙袋からシュークリームを出して私に1つ手渡してくれた。

「本当はレギュラーのシュークリームにしようと思ったんだけど、なぜかこのシュークリーム11日間の期間限定で出ていて。シュークリームで11日間だけの期間限定って珍しくないですか?しかも、限定なのにレギュラーのシュークリームより安くて、どうなってるのかと思いながら、こっち買ってきました!」

コーヒー味のシュークリームで、早速その場でいただいた。

私も買ってきたもなかを出して1つ手渡した。

2人で食べながらも喋る口はそのままで(←主に私)、ちょっとだけ真面目な話もした。

Sさんが最近温泉や大型入浴施設に行くと、肌の調子が悪くなったり具合が悪くなったりすると言った。

温泉の1つはうちから一番近いところで私も何回か行ったことがあって、あそこで調子悪くなるなんてよほど合わなかったのかな…と思ったけれど、そのすぐあとに「なんか違う気がする」と思った。

ペンジュラムを出して、Sさんの手の上にペンジュラムをかざして聞いてみた。

やっぱり温泉とかではなく、原因はまさかの月で、Sさんの場合は新月よりも満月の方が影響が出やすいとわかった。

肌につけるものに注意が必要というところまでわかると、Sさんに聞かれた。

「もしかして、肌に合うタイプとかまでわかる?」

「多分わかるよー!」

「じゃあオイルとクリームならどっちがいい?」

「オイルじゃなくてクリーム」

「私もそう思ってたんだ〜。やっぱり合う合わないってあるんだね〜」

「家にあるクリームでピンとくるのあったら言ってください」

1つ目のものはNOが出た。

Sさんが「これかな…」という皮膚科で処方されるものを言った。

聞いたらそれにYESで、それがSさんの場合は一番合ってるとのことだった、ペンジュラムいわく。

ふと気になって、Sさんに生年月日を聞いてさっとSさんのホロスコープをサイトで作って見て、その場でわかることを少し話した。

だいたい数ヶ月とかのスパンで不調や何かを感じる場合、公転周期の遅い天体の影響が考えられる。

Sさんは思った通りだった。

こういう時いつも考えてしまうけれど、嘘を言うとか隠すとかは嫌だから、あくまでも「傾向」として話す。

知らないよりもそうだと知っていた方が良いかな…なんて思ってしまう。

さらに、これから数年の中で明治維新とか天動説から地動説に移行した時並みの世の中の変化を迎えると読み解けるのに、それを知ってて黙ったままなのも考えものだった。

というようなことも、自分の中にある思いと共に話した。

Sさんは聞いてくれた。

「これ、みんなに話すわけじゃないよね?話せると思って話してくれてるんだよね…」

本当にそうだからそうだと答えた。

Sさんは自分のことを気付かない鈍い人と思っているけれど、私から見て絶対に違う。

その話を聞いて、話よりもその「私が誰になら話すか」みたいなところに注目できることがもう私からして「気付く人」だと感じる。

Sさんはわかってないみたいかだから今言うと、「誰なら私が安心して話せるか」の部分を本当に何の気負いや構えもなく自然に満たしてくれる人で、それが私だけじゃなく他の人たちも言葉にわざわざしなくても感じてることだと思う。

ちなみにSさんは本当にすごくて、職場の人たちの個人の連絡先をほぼ全員分知っている。

私が辞めた翌年にSさんも16年勤めて退職されたけれど、すごいのは歴代の一緒に仕事した人たちの1人に「みんなが私の交通費と宿泊代を出してくれるなら東京に行ってみんなに会えるのに」と言って、それを本当に実現してもらったとのこと。

それが何よりもの退職祝いになると話してリクエストしたらしい。

ちなみにSさんは派遣で16年もいた人!

正社員とか契約社員ならまだわかるけれど、派遣でそういうことをしてもらうなんてのは、私からすると例外中の例外だと思う。
(派遣差別ではなくて、珍しいという意味)

Sさんの一声で、Sさんとゆかりのある一緒に仕事をした人たち関係者10数人で本当に集まって会を開いてくれたとのこと。

まさにSさんの人徳だなぁと思った。

「言ったもん勝ち」とSさんは言っていたけれど、それは言えるだけの関係をSさんが長いこと1人1人の人と築いたからの一言に尽きる。

話を聞けば、今は部長級の人もお二方おられたようで、そんな人たちをも動かす。

ちょうど後から、『未来事典』の本をSさんと一緒に見て、そのSさんの性格まんまのことが中に書かれていて、Sさんと2人で目を丸くして驚いた。




途中で今日のメインイベント「あじさい公園」に移動した。

Sさんもバーベキューをしたことがあって知ってる場所だった。

だけど紫陽花の咲く時に行ったことなかったから知らなかったと言われた。

私は、初めて見つけた年以降毎年見に来ていて、Sさんと一緒に働いていた時は、やさぐれると仕事帰りによく寄ったと話をした。

Sさんにその気持ちわかると言われて、Sさんも時々気持ちを晴らしたい時、自然のある場所や公園に行くと言っていた。

Sさんと並んで歩いた時に、Sさんが言ってくれた。

「ブシ俣さんと私って、たとえ共通の趣味はなくても、お互いにこういう感性、大切にしてることや大切にしたいこと、安心するポイントが似てるんだと思う。
こういうのを思うと、人と仲良くなれるかどうかって、付き合いの長さとかじゃなくてそれ以外の部分で大切なことが同じかどうかかな…なんて思う」

すごく嬉しい言葉だった。

本当に趣味はほぼ何もかすらないぐらいに違うものがお互いに好きだけど、言われてみれば自然の中に身を置くことや、くだらないことから深いことまで色んなことを話すことはお互いとても好きだったりする。

人が少なくなった公園の中で2人で似たような写真を撮って、次のあじさい公園へと行った。

私が先に運転をして後ろからSさんが付いてきた。

運転しながらSさんのサイドミラーが超素敵で、バックミラーから何度も何度もチェックした。

後から聞いたら、美術系の大学に通う娘さんが描いてくれたとのこと。




初めて誰かとあじさい公園に来た。

少しだけあじさいを見たら、公園の中の高台のデッキウッド調の椅子とテーブルが置かれているところに移動した。

「今日スペシャルなお茶を用意してきたんです」と言いながら、Sさんがリュックから仕事の時によく見かけた蓋のデザインが可愛い水筒と黒い陶器のカップとプリンなんかをコンビニで買うと付いてくる透明のスプーンを出した。

「これ、食べる紅茶なの!すごい匂いがいいでしょ♪」

匂いを嗅いだだけで、果物のフルーティーな匂いがして、それだけで「美味しい」ってわかった。

それをカップに適量入れて、お湯を注いで、1つ私に渡してくれた。

「お湯冷めちゃったかもだけど…、大丈夫かな…なんか大丈夫そう…」とか言いながら渡してくれた。

食べる紅茶も実際にすごく感動したけれど(仕事中に教えてくれた美味しいお茶の正体だった)、それよりもこのSさんの心遣い、家で今日のおしゃべりデートを想像しながらあれこれ用意してくれたその心持ち、それにめちゃくちゃ感動した。

そこで『未来事典』を見ながら、Sさんのテーマを少しだけ見た。

Sさんは「当たりすぎて怖すぎる」と言って、多くは見ず、最小限だけチェックした。

子どもたち3人と旦那さんの分をその場で調べて見てみた。

1年以上前、Sさんと仕事帰りにうちの近所のおいしいイタリアンで飲んだことがあった。

その時に長男くんと娘さんとが車で迎えに来てくれて、私は2人ともと会った。

本当に素敵な子たちで、短い時間しか一緒にいられなかったけれど、すごく気持ちの良い空気が車内に広がっていた。

長男くんは私と誕生日が1日違いで、私と全く同じテーマを1つ持っていることがわかった。

娘さんは、ついその前の日に、ペンジュラムが来た時のホロスコープで見つけたペンジュラムの「まさに!」という性格のところと同じものを持っていた。

あの時にすでに色々繋がっていたんだなと知って嬉しくなった。

私たちは空の色が変わるのを時々確認しながら、色んな話をした。

職場の人たちの話もたくさんした。

ヒューマンドラマじゃないけれど、誰がどうしてるとかいう話ではなくて、今となればすべて「思い出」の部分だった。

例えばSさんが最後に一緒だった新入社員の男の子とは、なんと家族ぐるみで付き合ってるとのこと。

その時にトップの悪口じゃないけれど、「あの人は頭がいいかもしれないけれど、それと同じことを俺に求められても困る」と愚痴ってたという話が出てきた。

私はそれを聞いて、突然記憶が繋がった。

今のトップの人は、私が辞めた時のトップと同じ人で、たった一度だけ参加した飲み会の時に話してくれた話を思い出した。

彼は元々勉強とかできなかったタチで、中学の途中ぐらいまでは下から数えた方が早いぐらいに悪かったとか言ってたと思う。

途中、やればやった分わかるようになるし点数も取れるとわかって、猛勉強してトップに上がるまでやり抜いた話を教えてくれた。

たしかに今の彼だけ見たら頭の回転が速い部分だけ目立つかもしれないけれど、そこに至るまでめちゃくちゃ努力して上がった人だから、多分やればできるという自負があってのことと、さらには自分のところについた子ができるようになるのは本当に嬉しいからだからきつくなっても教えるべきものは教えると言っていたことも思い出して、それ今の新しい子に教えてあげたらちょっとトップの人の見え方が変わるかもね…と伝えた。

Sさんも「それいいね!」と言ってくれ、今度会ったら話す!と言っていた。

そうだ、思い出した。

Sさんから衝撃の事実を聞いた。

私たちが通っていた職場は、これから何年もしないうちになくなってしまう計画らしい。

事業展開が変更して、ほぼほぼ内部では確定しているとのことだった。

トップシークレットらしく、言う人も私は誰もいないけれど、まだほとんどの人が知りませんと言っていた。

Sさんも「さすが!」と思う状況でたまたま知ることになった。

それを聞いて、ますます色んなことを思った。

あの時にしか存在し得ない時間と空間だったと知った。

色んな思いが交錯しすぎて、それはまた違う記事で書こうかな…と考えている。

その時に当時のトップの人の話が出た。

Sさんだけがこの世で唯一、当時のことを登場人物含めて知っている人だった。

Sさんは本当に素晴らしくて、知った後も、私は私、元トップの人は元トップの人と分けて、それぞれと付き合ってくれてる。

当時肩を並べて仕事をしていた時に、Sさんはその人の情報を私に教えてくれた。

私の知らないそして知りたかったその人のことを、私は黙っていつも聞いてた。

最後辞める前に、ずっと何も言わずに色々聞いていたことが心苦しくなって、Sさんに話した。

当時や最近のことを聞きながら、その人がとりあえず元気だと知れて良かった。

珍しくその人から誘いがあったとSさんが言って、とても喜んでいた。

その人は自分のそういう行為が誰かを喜ばせるって知ってるんだろうか…と思った。

そういうことを滅多にしない人らしいから、とても特別なようだった。

Sさんが「Oさんって知ってます?」と聞いてきた。

名前聞いただけじゃわからなくて、「その人知りません」と答えた。

「あー、たしかブシ俣さんいた時に1回来たはずなんだけどなぁ…」

Sさんが「マサルですよ!」と付け足した。

その名前を聞いた瞬間、私はマサルと呼ばれる人物の人の良さそうな、静かだけどみんなから気にかけてもらえてた人のことを思い出した。

一度、それも数分しか見てないのに、顔まで覚えてた。←超稀な出来事。

不思議な気持ちになった。

1人1人を単体で見ると繋がりなんて何もなさそうなのに、そうやって見えないところで今も繋がり続けてるのが羨ましかった。

あと、本当はこんな方法一番良くないんだとわかってはいるけれど、誕生日を知れることになった。

私は自分の身に起きた色んなことが結局自分だけの話だったのか、相手側にも何か影響があったのか知りたかった。

ホロスコープを読むようになってますます知りたくなって、なのにそれだけ知れなくて勤めてた当時から悔しかったと話した。
(勤めていた時はホロスコープは知らなくて、単に何となく知りたかっただけ)

Sさんがすごい嫌がってた個人情報を扱うファイルの整理の仕事も私が率先してやったのはそういう意図があったからだけど、そうまでしたのに知れなくて残念過ぎた!と私がわぁわぁと今さらのように告白した。

そうしたらSさんが「私誕生日、そういえば知ってるかも」と言い出した。

提携会社の人がその人の誕生日にケーキを買って持ってきてくれたらしい。

それでSさんも誕生日と知って、LINEで「誕生日おめでとう」と送ったら「バカヤロー」のスタンプが返ってきたんですよ、笑えるでしょ!と教えてくれた。

Sさんは、当時のやりとりをLINEで検索して、そしてそれを見事に見つけた。

「何日か当ててくださいよ!」

Sさんはもったいぶって言った。

私は一度だけ仕事中に隣りの人が「たしかこの日だったと思う」というのを聞き逃さなかったことがあって、そのことを説明しながらその日付を言ってみた。

「あたり!」と言われて、バカヤロースタンプも見せてもらった。

私は日付は見ずに、その個性的なバカヤロースタンプを見た。

その人らしい反応だなぁと思った。

多分素直に「ありがとう」とか言えなさそうと思った(笑)。

Sさんは日付を確認しながら、「ブシ俣さん、その時いなかったでした?」と聞かれた。

それは私がその職場に行く前で、そして行って実質3ヶ月ぐらいしか重なる時間がなかったことも話した。

「本当にすごい僅(わず)かな時間だったんだね…」とSさんも驚いていた。

その近未来になくなるかもしれないその場所で、本当にタッチ差みたいな形で少しの間だけ一緒の空間にいることが許された人だった。




その話を聞いて後から思い出した。

買ってきてくれた人がいつだったか私の隣りの席の人と、トップの人の呼び方だったかそんなような話をしていたことがあった。

新潟に着任する前?役職に就任する前?に仕事で呼ばれたのか、その人はケーキをプレゼントしてくれたKさんと一緒に現場に出た日があったようだった。

言い方から、1回ではなかったのかな…という感じがした。

Kさんは、その時はまだ役職名がなかったから、下の名前にちゃんを付けて「〇〇ちゃん」と呼んでたと言っていた。

隣りの人に「うっそー!?そんなことあった?」とか言われながらも、「嘘じゃねぇよ、ほんとだよ!」と返してた。

「だけど、まさか役就いて、下の名前で馴れ馴れしく〇〇ちゃんなんて呼べねぇから、今度は〇〇長(役職名)で呼んださ」

ケーキの話とその話がリンクした。

Kさんがその話をしていた時(もちろん本人は不在)、Kさんはその人のことを自分の方が年上ではあるけれど、慕っていることが雰囲気で伝わってきた。

なかなかキツイ感じの人ではあったけれど、きちんとしてるのが好きできちんとしてないのは多分ダメなタイプで、Kさんはその人の仕事のやり方とか向き合い方が好きだったんだろうなぁと思った。

実際に私が知れる範囲で、2人それぞれ仕事のスタイルは似ていた(資料に残っていてそれはわかった)。

だから、Kさんがケーキを買った話を聞いて、すごい意外な感じなのに突然あの時すごい納得した理由を、私は後から色々繋がって「だから納得したんだ」と思った。

Kさんが誰か個人の話をそんな風にしたのは、私がいた中でそれ一度きりだったと思う。

仕事上のやりとりで誰か個人の名前は出ても、仕事ではなく本当に個人としての、はっきり言って仕事には関係のないことを、とても嬉しそうに話してたのはそれ一度きりだったと記憶している。

ましてや誰かに誕生日ケーキを渡していたのなんて、私は一度も見たことがない。

何人か誕生日を迎えた人たちはいたけれど、そんなことしてもらってた人はいなかった。

静かな人ではあったけれど、愛されキャラだったんだなぁと思った。




私は帰る時間を気にしなくて良かったけれど、Sさんは大丈夫なんだろうかと思った。

Sさんも今日はごはん作らなくていいし、時間大丈夫と言った。

日も沈み始めた頃、私たちの後ろ側は太陽のオレンジの光が強く当たっていた。

見て!きれいだよ!と言いながら2人で見た時に、「こういうのを共有できるっていいね」みたいなことをSさんが言ってくれた。

しばらくすると、今度は私たちの眼前の方に、さっきのオレンジ色の夕日光線が真っ直ぐ遠くにまで伸びてた。

今度はSさんが「見て!」と言った。

外はどんどん冷えてきたけれど、私たちはずっとその場で話し込んだ。

街灯がなくて、遠くの家々の光や車のライトぐらいしか光はなかった。

お互いの顔を見ても目は見えなかった。

でも互いに顔を見合っているのが、黒い輪郭の感じでわかって、見えなくても見ようとするその感じがいいなぁと思った。

途中、ギターを持ってきて弾いたおじさんがやってきて、やさしい音色のバックミュージック付きだった。

平原綾香のジュピターが、この空気感としっとりとマッチしていた。

一度「移動します?」って聞いたけれど、Sさんはこの感じが特別だからこの方が良いと言った。

私も同じ気持ちだったから、それもまたとても嬉しかった。

Sさんは言った。

「寒くても暗くてよく見えなくても、こういう中で話ができる、一緒に時間を過ごせる、そのことの方が私にとって特別でとても嬉しいことだから、このままがいい」

Sさんも私もこういう時間は、少なくとも今日のような時間は下手したら一生で一度きりかもしれないとわかっていたから、この特別過ぎる時間を心から満喫した。

途中、雲の間に光が見えて、もしかして月が隠れているのかもしれないなぁ…なんて思っていたら大当たりで、Sさんに「見て!月だよ!」と言って、お月見タイムと相成った。

私の方からはよく見えるけれど、Sさんからは見えない方だったから、途中私たち2人でベンチの向きを変えて、2人共が見えるように座り直した。

2人で数十分おきに携帯で時間を確認して、まだいいかな…なんて言いながら、いつまでもいつまでもこの今ある時間を楽しんだ。

そんな時に、山形県沖を震源地とする大きい地震が来た。

最初携帯の「地震速報」を知らせる緊急メールみたいなのが入って、その地域の設定なのか大きな警告アラームみたいなのや、無線の緊急放送みたいなのが一斉に大音量で入って、それにビックリしたら、本当にユラユラとものすごい長さで、そして途中からはどんどん強く揺れて、ものすごい怖かった。

Sさんは本当に地震が苦手で、私以上に怖がって私の手をぎゅっと握っていた。

本気でダメなんだとわかって、私はSさんの背中をさすった。

冷静になれたのは、Sさんのおかげだった。

あんなの一生で何回もないと思うけれども、突然冷静にならなきゃいけないとスイッチが入った。

Sさんは取り乱してごめんねと何度も謝っていたけれど、私は気にならなかった。

むしろ、こういう時にSさんが隣りにいてくれて心強かったし、そしてこんな貴重な、大切な思い出になることがその時から決定していた時間の最後に地震が起きたら、一生忘れない思い出になると確信した。

私なんかは、この後から次の日にかけて何人かから地震大丈夫だった?と聞かれて、大丈夫という返事と共に、この素敵な時間の最中だったことをみんなに触れ回った。

1人は、
「そりゃあ言いたくなるよ‼️
特別感たっぷりだもん!!」
と返してくれて、わかってくれてめちゃくちゃ嬉しかった。

もう1人、私はSさんにホロスコープのクラスメイトのNさんからプレゼントしてもらった絵をわざわざ持って行って見せたんだけど、そのNさんからお月見タイム&地震についてとても素敵な解釈が送られてきて、それを後からSさんにも転送した。

絵を描いた人だよって説明しながら。

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なんとドラマティックなシチュエーション! なんか、始まりって感じがした、そのシチュエーションを思い浮かべたら。新しいフェーズの始まり。不謹慎というものかもだけど、すてきなシーンだなあ。

(転送しなかったけれど、もう1つ後から来たもの)

地震のこと、
マラソンのスタート地点って、
みんな一斉に走るから大地が揺れる感じがあるじゃない、
で、すごい歓声、みたいな。
ぶっしーメール読んで、感じたのは、そういうイメージ。
高層ビルのオフィスで地震にあうのとは、意味が違うって思った!

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余震を心配してしばらく待機したけれど、何も来なかったから私たちは落ち着いているうちに帰ることにした。

体はすっかり冷え込んでいたし、地震の揺れでかなり気持ち悪くなっていたけれど、心は言葉にできない充足感でいっぱいだった。

ここには書ききれないもっともっと多くの色んなことがあった。

だいぶ濃縮して書いてこれだから、実際はもっともっと濃密だった。

Sさんも私も会ってすぐぐらいに「本当は何回か連絡しようとしたんだけど…」と、お互い連絡しようとしてやめたことが会ってない1年ぐらいの中で何回かあったことを知った。

こういうのって口にしなきゃなかったことになってしまうもので、でもわざわざ口にするとお互いに知ることでプラスアルファの気持ちをお互いにプレゼントできる。

こういうことがSさんと私の共通点なのかもしれない。

目には見えないけれど、確実にあったら嬉しいもの、それが同じ。

冒頭の写真がどんな順番でアップされるかわからないけれど(システムの具合次第で勝手に入れ替わる)、ルイボスティーとヘアゴムと栗模様の袋はSさんからいただいたもの。

ヘアゴムは来週の東京行きの時に付けていこう!って即決した。

「普段ブシ俣さん、ピンクってイメージがないんだけど、これはブシ俣さんはピンクって感じがしたの」
と言って渡してくれた。

いつかどこかのお店の中で、私を思い浮かべてくれたんだなぁとわかったらすごく嬉しかった。

そして、同じおそろいのヘアゴムをSさんがしていた。

おそろいなのも嬉しかった。

ルイボスティーに至っては、朝よくパッケージを見たらすごいことに気付いて、「狙いました?」って聞いたら、「買う時に知ってたので 笑。狙ってはいないですけどね 笑」と返信がきた。

花見やお月見しながら話に登場した内容とシンクロしていて、それ見てテンションが上がった。




朝ドラ『なつぞら』を見ていたら出てきたセリフ。

【奇跡は、当たり前のことをする勇気なんじゃないか…。】
〜6/19放送分より〜

Sさんも私も特別なことをしたんじゃなかった。

当たり前というか、お互いにお互いの好きを交換する、それをとてもスムーズに行えた一期一会の瞬間瞬間だった。

そして、そのかたまりが「奇跡」となって、2人の元へ舞い降りてきた気がする。

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