2018年11月6日火曜日

口説かれる【リバイバル】

【はじめに補足】
mixiの別の日記を探していたけれど見つからず、代わりに『口説かれる』という題名の日記を見つけて開いて読んだらビックリ(O_O)。
(子どもたちが私を助けてくれた話をどこかに書いた記憶があるけれど、それは見つけられなかった)

今から12年前だから、27歳だった私。

今読み返すと「私大丈夫?(-_-;)」と思うけれど(←夜中の3時にアップしていたから、酒が入りまくった時の文章)、当時はこれ書くぐらいの自分だったんだなぁと思った。

時期的に、私生活の方の関係は破綻寸前だった。

27歳だった私は、もう女として価値がないのかとずっと悩んでいた。

だから、上司から可愛がってもらえたことがめちゃくちゃ嬉しかったんだと思う。

当初近寄るなオーラが半端なかったこの上司とは、挨拶さえ交わせない感じだった(下っ端の私だけが一方的に挨拶して、無言みたいな…=基本返ってこない)。

普通に冗談言えるようになってからは、挨拶についてよく突っ込んだ。

みーんなが挨拶するの怖いって言ってますからね!、と陰口をわざわざ上司本人相手に報告していた。

でも本当はとても優しい人で、私はこの上司なくしては当時の仕事は務まらなかった。

5年半、ずっとずっとフォローされっぱなしで、本当によくしてもらってた。

っていうか、そんな会話してたんだ!とビックリして、いくら飲み会の席とは言え凄い会話をしてたんだと今知った。

この文章を今39歳の私が読むと、今だからこそ響く言葉がある。

文中に私の態度だとか主張だとかに好意を持ってもらってる話が出てくる。

当時の仕事は、常に素の自分でいることが求められた。

だから、私は自分を取り繕うこともなく、子ども相手にぎゃーぎゃー吠えていたし、上の人たち相手でもおかしいと思ったら「あの〜」とか言い出していちいち重箱の隅をつつくみたいな小姑のようなことしてた。

そうした諸々がオブラートに包まれることもなく丸見えだったから、その自分を見てもらっての言葉だったのが、今読むとすごく嬉しい。

そういう私をいいと言ってくれる人もいるわけだから、これからも素の自分でいて良いと言ってくれる人たちと一緒にいたらいいんだと改めて思った。



【2006年春】
彼は酔っていた。
酔っていなかったかもしれないし、もしかしたら酔ったふりだけだったのかもしれないけれどお酒は入っていた。

話仲間、愚痴仲間とでも言おうか、そんな間柄の彼と私。
職務上は上司と部下。
生物学上は男と女。
そう、男と女。

自分でもわかる。
自分の声のトーンが上がるのを。
そして人の目を直視して話ができない彼がいつの間にか目をしっかりと見て私と話をするようになったのも。

彼のコーヒーは一応健康を気遣って本人はブラックと公言しているけれど、実際は大の甘党で砂糖とクリープを大量に入れることを好む。
私がコーヒー当番のときは黙って砂糖とクリープを入れる。
コーヒー牛乳より薄い色になると、あぁ今日のコーヒーはいいかなぁと思う。
いつだったか彼は私が入れる砂糖とコーヒーの量が私の彼への愛情の量だと冗談めかして言った。
じゃあ私はいつもたくさん入れるから愛がたくさんだねと言ったら、足りないって言っているんだと彼は笑って皮肉った。

細々とした野暮用を見つけては彼が私のところに話にくるようになったのはいつ頃からだっただろう。
気付けば誰よりもたくさん二人だけの空間というのが増えていることに気付いた。

彼は自分の机を仕事机として使わない。
必ずその日休みの人の机を使っている。
気付けばいつも私の目の前の席か隣りの席を愛用するようになっていた。
私は単純にコンセントが近いからたまたま近くに座っているのだと思った。

そんな彼は
「どうして生きるのか」
「愛とはなにか」
「自分は人生で何をしたいのか」
というような仕事とは関係のない哲学的な話をする。
私も興味関心の強い部分の話だからいつもふんふんと話に耳を傾ける。

今日もその話から始まった。
周りの喧騒を避けるようにして、彼は今大事な話の最中だから邪魔しないでくれ、俺に少し話をする時間をくれと冗談ぽく周りに宣言していた。

周りがそれぞれ自分たちの居所を確かめるようにして話し相手を見つけて落ち着くと彼もようやく落ち着いて一つ一つ言葉を選びながら話し始めた。

最初彼がまた冗談でも言っているのかと思っていた。

彼の口癖は私を口説いても自分にとって何のプラスにもならないし、エッチできるわけじゃないしだった。
だから口説いてもいいことないから口説かないと言っていた。

だけど今日は

「何て言うかなぁ・・・、抱いてもいいなら抱きたいけどそういうのではないんだよね。肌を寄せ合いたいというのも少し違う。でもそばに置いておきたい。そばにいたい。う~ん、何て言うんだろう。
まぁ少なくとも出会ったときは絶対にこんな女抱きたいと思わなかったけど、でもどんどんかわいくなっていくんだよね。
とにかくかわいい。
外見もどんどんかわいくなっていくし、でもそれだけじゃなくて態度とか主張とかそういうのが全部いいなぁ、俺の好みだなぁと思う。
好きっていうにはそうのような少し違うような・・・」

話を聞いていて、何せ冗談めかして言うような、笑って言うような感じだったから、また最後はどうせ自分にとって得にならないから口説かないよって言うんだろうなぁと思っていた。
別にそれでよかったから。

だけど今日は同じ質問を何回も繰り返し聞かれた。

「俺が口説いたら口説かれる?」

私はどうかなぁとか、だって本気で口説こうと思ったら普通そんなこと言わないじゃんなどと返していた。

「安心できる、ホッとできる。っていう感じでもないなぁ。この想いを添い遂げて一緒になりたいとかいうんじゃないもん。だけどいいなぁと思うんだよね」

「好き」

「好き」

と目をしっかりと見て言った彼。

なのに私は「冗談ばっかり!」と返した。
他に返しようがなかった。
代わりに彼と一緒にいると楽しいと伝えた。
私も恋に落ちちゃうかもなどと冗談で言った。

お互いに守りたい人がいる。
お互いに知っているお互いの身辺情報だ。
だから体の関係云々というのは冗談で言っても決してそれが現実のものとはなりえない状態が今。

彼は今がいいと思うから、それだけなのかもと言った。
だけど自分が今まで好意を持った女の子のことはみんな覚えていると言う。

職場だけでの関係が今二人をたまたまつなぎとめているだけだから、いずれ今の関係はなくなる。
どちらかが仕事をやめれば年賀状を出すかもしれないけれどそれ以上のものはないだろう。

「じゃあたとえばどちらかが仕事をやめて離れたとき私のことは覚えていそう?」

「残るよ」

「じゃあ職場の人みんな残るの?」

「それはどうかな。でもぶしちゃんは残るよ。少なくとも自分の気持ちにかすった人は残るよ」

ふ~ん、とこれまた返しようのない返事で相槌を打った。

私は淡々と返事をした。
これでちょっとでも真面目に返事しようものなら、それってどうなるんだろうと思った。
そのどうなるんだろうっていう疑問がただの疑問じゃなくて不安も入り混じっていた。
相手の言動をカセットテープから流れる音楽のように聞き流していた。
聞き流すふりをした。

会もお開きで次の店に移動というとき私は、もう帰ります、ありがとうございました、と職場の面々に挨拶してみなの輪からは反対の方を歩き出した。

しばらく立ち止まってから歩き出した私はたかが100メートルの距離を10分くらいかけて歩いた。
交差点の角に着いて信号待ちをしていたその時、右手の方から彼が姿を現した。
あれ、帰られるんですか?みなさんと一緒に行かれたんじゃないんですか?と声をかけた。
ほらこうして浮遊することでぱったりと会うんだよね、と言った。
次の会にも出るけど・・・と言葉を省略した彼。
何か言いたそうにしながら二三私に言葉をかけてからじゃあ俺行くわと言ってまた来た道を戻って目的地へと彼は歩き出した。

意識が違うところにあった私ははじめ彼の行動が不可解だった。

だけど意識を現実レベルに戻したとき、はじめて今日一日
「口説かれていたんだぁ」
ということに気付いた。

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