2015年4月5日日曜日

ゴリラのヒント②

昨日の『ゴリラのヒント①』の続き。

昨日書いた、ももちゃん。

1学年200人以上いる学校の中で、塾に入ってきた時は100番台。

それが2年いる間で学年9位まで上がったミラクルな女の子。

ある時、塾に勤めていた時の恩師のゴリラが、こんな風にわたしにアドバイスした。

「その子(=ももちゃん)がこれからおまえの自信になり、おまえのヒントになる。

だからよく見とけ。

その子がどうなっていくか、そしておまえがその子に何をしているのか。」

どうなっていくかはそれが仕事だから見ていたけど、自分が何をしているのかは結局わからず

じまいだったし、そんなことを言われたことすら忘れていた。

すでに退職してから3年以上も経過して、当時の記憶もおぼろげだけど、

もしかして・・・という仮説がおととい昨日でふわっと出てきた。

それについて今日は書こうと思ってる。


最初にももちゃんのことをもう少し詳しく紹介したいと思う。

塾にいた時もそうだし、外部の人でもそういう人にたまに会ったけど、

知的な学力がずば抜けているタイプの人がいる。

そういう人は本当に東大に入ってしまうタイプの天才肌だ。

数百人ぐらい見ると、たま~にそういう子どもに当たったりした。

ももちゃんはそのタイプでは全くない。

何も手を入れてない状態のももちゃんは、やっぱりオール3の能力かなというのは否めない。

ただ、そのももちゃん、1つずば抜けていたことがある。

問題を解くスピードが通常の人の3倍ぐらい速かったこと。

言いかえれば、人が1問解く時に、ももちゃんは3問解く速さがあった。

これは、天才系の子どもたちにも勝るものだったし、あんなに速く取り組めるのは、

数百人見た子どもの中でも、ももちゃんだけだった。

だから、ももちゃんにわたしがしたことと言えば、量を多くこなすように指示を出すだけだった。

元々の学力が高いタイプの子どもではなかったから、当然わからない問題も色々出てくる。

それも実に粘り強く取り組んでいたし、できるようになってからの繰り返す回数は半端なかった。

だから、ももちゃんが学年9位まで上がったのは、その裏では相当な行動量をこなしていたことが

大きな勝因だったと思う。

ここまでは、塾に勤めていた時にも気付いたことだし、やればやった分上がるんだ、

と実に単純に捉えていた。


でも、そうじゃない。

たしかにももちゃんは行動したけど、その前にもっと大切なことをしている。

それに気付いたのがおととい昨日だった。

ももちゃんは、「勉強で成果を上げることを自分に許可している」

これを無意識に行っていたと思う。

ももちゃんは、どちらかと言うと、独特の価値観の中で生きている風で、

「ふしぎちゃん」と呼ばれてもおかしくないと言うか、発想がとにかく面白い子どもで、

がつがつ上を目指したいなんていうのは全くなく、非常にマイペースな子どもだった。

入試前に面接の練習もしたけど、例えば最近気になるニュースはなんですか?なんていう質問に

対し、他の子たちは当たり障りのないことを言っている中で、ももちゃんは一人だけ奇想天外な

意見を言っていた(たしか、ドラえもんが何だかんだというニュースを言ったと思う)。

面接官に絶賛されるか、反対に批判されるか、もうどちらかでしかないなぁという答えだった。

ある意味自分の個性をそのまますっと出せる強さもある子だった。

話は戻して、「成果を上げることを自分に許可している」の部分。

ももちゃんは、がつがつ上を目指すこともなかったけど、

反対に「どうせ私なんて・・・」とか「私できない」ということを一切言わない子だった。

自分を卑下したり、自分を過小評価するようなことはなかった。

多分早い段階で、私自身がももちゃんのスピード力には気付いたんだと思うけど、

わたしがももちゃんにひたすら伝えていたのは、そのスピード力が人よりもあることと、

だからそれをうまく使えば必ず結果がついてくる、やればできるということ位だったと思う。

子どもによって違うけど、ももちゃんの場合は本人の可能性の部分だけを伝えるだけで

良かったと思う。

あぐらかくような子にはそういうことを言うと危ないけど、ももちゃんはそのタイプではなかったし、

成績が上がった時も何よりも本人と保護者が一番びっくりする位だったから、自分の能力に対して

かいかぶることは最後までなかった。

だから、ももちゃんの中で、どの程度の結果が出てくるのかは未知数だったにしても、

「自分が良い成績を取ってもいいんだ」という思考はものすごく強く入っていたかと思う。

反対になかなか上がらなかった子どもは、

「どうせ自分にはできない」という思いが強かったような気がする。

当時もう少しわかっていたら、多分もっと色々違っていただろうなぁと思う。

ももちゃん以外にもそういう成功事例的な子どもが何人かいて、

やっぱり共通するのは、「自分はもっと成績を上げてもいいんだ!」とどこかの時点で

自分に許可を出していること。

これは「成績を上げたい」という考えとは大きく異なる。

「成績を上げたい」の出発点は、「今の成績の自分は駄目」というところだ。

「もっと成績を上げてもいいんだ」の出発点は、今の自分がどうであるとかは関係なく、

「別の道を自分が進むのもOK」という自分への許可だ。

だから自分を否定しているわけではなく、自分に選択肢を持たせる、そんな感じだ。

あとは、「上がっても上がらなくても、自分の価値は変わらない」という強い信念めいたものを

持ってる子どもたちは、別に上がらなくても良かったと思ってる。

むしろそういう子たちは、下がっても自分の人間性を否定するようなところはなくて、

「あぁ下がっちゃった!」の程度で、あとはいつも通りに元気だったりするから、

こういう子はこういう子でまた1つの強さの持ち主だと思う。


書いていてわからなくなってきたけれど、この「自分は○○してもいい」という思考回路、

これってすごく大事だと思う。

反対に、「自分は●●になっても自分の価値は変わらない」と思える思考回路も、すごく大事。

両方あれば一番いいけれど、どちらか片方でも身に付けていると、生きていく上でとても

強いツールになってくれると思う。

そして、どちらかがあるだけで生きやすいとも思う。

ゴリラがわたしに言った「自分が何をしているのかをよく見とけ」は、今もうまく言葉に繋げられない

けど、おそらく個人の感情を癒していく作業をしていたのではないかなと思っている。

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