2015年3月11日水曜日

過去の人たちが伝えるメッセージ

この1~2週間位、繰り返し頭の中に浮かぶ2人の子どもがいる。

もう今は2人と会うことも一切ないけれど、数年前仕事で関わった子どもたちだ。

彼らが中2~中3にかけての時間を共に過ごした子たちだ。

オール1のあきら(仮名)と、通知表でいう4と5が混ざった優等生ヒロシ(仮名)の2人だ。

塾の中だったから同じ時間帯に2人がいる時もないわけではなかったけど、2人に接点はなくて、

とにかく2人は学校も違うし、かもし出す雰囲気も180度違っていた。

唯一の共通点と言えば、私と人間関係があったということだけ。

社会的な価値観で言えば、あきらは超問題児だったし(学校からの呼び出しも半端なかった)、

オール1の子ども、それも読み書き計算ことごとく全滅に近い状態のあきらが、

高校に進学するなんて誰もが疑う、そんな状態だった。

一方のヒロシは、向上心の高い子どもで、礼儀も正しく、優しくて思いやり溢れる子だった。

学校での評判も抜群だったと思う。

もちろん2人のそれぞれの良さは社会の物差し抜きで知っていたつもりだし、

そして2人とも本当にとても好きな子どもたちだった。

ただ、わたしの目から見て、オール1のあきらは本当に幸せそうで、あきら信者みたいな後輩も

たくさんいたし(塾の中にもいた)、とにかくいつも楽しそうだった。

わたしにぶつかってくる時も、当然全力でくる。

何度わたしもぶちぎれたかわからない(←大人げないことこの上なかった)。

一方のヒロシは、いいもの本当に沢山持っているのに、それこそ「今の子どもも駄目じゃないです、

こんな素晴らしい子がいます」というような人間的な良さを持っているのに、

なんだったら間違いなくわたしよりも頭脳の能力がはるかに上だったけれど、

それでもヒロシはいつも自信がなさそうだったし、自分のことをどこか責めたてる風だった。

できたことよりもできなかったことに着眼してしまう癖もわたしはよく知っていたし、

とにかくどんな誉め言葉や評価も受け取れない風だった。

実際に両方のお母さんとも何回も懇談していたし、子ども含めての三者面談もしたし、

どうしてそれぞれがそんな風になるのかは親子関係を見てたら一目瞭然だった。

あきらのお母さんは、息子のできないことも受け入れていた。

そして度重なる学校からの呼び出しについて、いつかこんな風に話してくれたことがあった。

「学校の先生が言うんです。

『可能性のある子どもは、こちらも、子どもがどんな風でも

あきらめずに接します。何度でも呼び出します。

でも、もうダメだと思ったら呼び出しはしません。』

そう言われたので、あきらにはまだ可能性があると思ってもらえてる、と私信じてるんです。」

このお母さんには敵わんと思った。

一方のヒロシはどうだったのかと言うと、三者面談する前から薄々は気付いていたし、

ヒロシの口から語られることもあったから、あぁどうなるかな・・・と思っていたけれど、

本当に想像した通りの3人での話し合い(?)になった。

「(?)」を付けたのは、話し合いと呼んでいいのかすらわからない状態だったから。

「親の前で何も言えなくなる、親が先に何でも言って何でも決めてしまう」

ということをヒロシは時々こぼしていた。

だから、3人での話し合いの場も、まさにそんな風だった。

話し合いではなく、お母さんが一方的に話し倒す風だった。

ヒロシは委縮していたし、時にはもう何でもいいよと反抗的な態度に出ることもあったし、

とにかくそこに「調和」などというものは存在が許されないかのごとくだった。

反抗期特有の子ども、では片付けられない位に、ヒロシの痛みが伝わってくるようだった。

進路は、あきらはあきらにぴったりなところに行ったし、

ヒロシは第一志望が通らなかったけど、わたしは逆にそれで良かったと本気で思った。

なぜそう思ったのかと言うと、第一志望は、その辺りでは「超」がつく進学校だった。

こんな言い方は悪いけど、間違って合格したらさらにヒロシの潰さなくていい大切なものが

潰れると思った。

だから落ちてくれて本当に良かった、と心の中では思った。

(ちなみに、愛知県は公立2校受験方式)

振り返りはこれ位にして、とにかくこの2人がよく意識の上にのぼってきたのがここ最近。

わたしはどちらの子も、人間味溢れる、それぞれ独自の魅力に充ちていたと今でも思っている。

この対照的な2人がずっと出てくる日が続いて、一体何をわたしはこの子たちを通して

何を見ているのだろうと来る日も来る日も考えていた。

今日ようやくその答えがぱっと出てきた。

わたしがあきらから学んだことは、どこか著しく欠けるものがあっても本人次第でしあわせになれる

ということ。

そして、ヒロシからは、本当にありのままで十分に価値があるということ、本人がどんなに否定

しようとも、本人の持っている独自の人間力は他には代えられない素晴らしいものだということ。

2人からのメッセージが、今のわたしにはとても大切な学びになっている。

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