2015年5月19日火曜日

青い空の本音

夕方6時ごろ、まだ空は青かった。

うっすらと雲があるぐらいで、空は晴天に近い。

夕焼けすらまだ早い時間で、これから1時間散歩してもいいなぁという感じだった。

何の用事もなかったけど、外に出てふらふらと散歩した。

その青い空を見ていて、塾に勤めていた頃によく子どもたちからかかってきた電話を思い出した。

だいたい、今日みたいな天気の日。

その位の時間になると、電話がくる。

「あのさぁ、まだ遊んでるから、塾の時間変えちゃダメ?」

男の子も女の子も、変な言い訳なんかせず、直球ストレートで毎回勝負の電話をかけてきてた。

許容人数に問題がない時は、「お母さんに聞いてOKならいいよ」と返事してた。

「ただ、毎回毎回はやめてね」とも付け加えていた。

今考えたら不思議な会話だったと思う。

言い訳してもいちいち突っ込まれるのが嫌だと察知するのか、言い訳する子が少なかった。

「あのさ、宿題終わってないから遅れて行ってもいい?」とか、

「今警察なんだよね。塾今日休む・遅れる」とか、

ストレートに何も包み隠さず電話の向こうで子どもたちは各々の事情を話していた。

だから、今日みたいな天気のいい日でまだもう少し遊べる!とわかると、大体誰かしら電話を

かけてくる。

反対に、日の短い秋や冬になるとそういう電話は減っていたかと記憶している。

あの時は、自分がその時間帯に外にいなくて子どもの気持ちのひとつもわからずに返事をしていた

けど、今日自分が外に出てみて、あぁこの明るさならもう少し遊びたい、友達と一緒にいたい、

そういう気持ちわかるなぁと思って散歩した。

そのついでに思い出した小学生の男の子がいる。

数百人見て、そのうちの数十人は塾の退会の手続きも踏んだと思うけど、その子の退会理由は

とってもユニークだった。

退会の手続きは本人じゃなく保護者とするけど、お母さんの話がとっても印象に残っている。

退会する時は必ず理由を聞くし、そして書類にも簡単に理由を書いてもらうことになっていた。

お母さんは何度もそのままの理由を書いていいですか?と確認しながら、わたしは逆にわたしが

会社に説明するためにも本当の理由の方がいいからありのまま書いて欲しいとお願いした。

その退会理由は

「子どもが遊びたいため」

だった。

もう少し付け加えると、子どもの遊びたいという気持ちを大切にしたい、だった。

あまりに前のこと過ぎて記憶があいまいだけど、その子は1年生の頃に入ってきた。

わたしが勤めていた学習塾で1年生から入ってくるというのはとてもめずらしかった。

入会の手続きはわたしの上司がするから間接的にしか入会理由を聞かなかったけど、

たしかコミュニケーションの力を伸ばすとかだったと思う。

学力の心配はほとんどされておらず(と言っても、大抵のお母さんなら悩む位のもの)、

とにかくコミュニケーションがなかなか取れないところがお母さんの最大の心配事だった。

実際にその男の子と対面して、わたしもお母さんの言わんとするところがわかった。

おそらく学力は低くない。

むしろ感受性が豊かで、色んなことをたくさん感じている風だった。

だけど、そのたくさん感じていることをどんな風に言葉にしていいのかわからないんだろうなぁと、

そんな印象だったことはよく覚えている。

最初の頃は、あいさつをすることから始めた。

ほんと、それ位、引っ込み思案で、何か言いたそうな顔をしてるけどそれを外に出せないのか、

出そうとしないのか、そんな風だった。

会話をするなんて夢のまた夢状態で、しばらくはあいさつと簡単な確認の質問程度しか会話が

成立しなかった。

だんだんと馴れてきてからは、大きな声であいさつすることも、何かを一生懸命言葉で伝えることも

ひとつまたひとつとできることが増えていった。

表情もすごく豊かになったし、塾主催の農業体験も自らやりたい!と言ってフル参加だった。

3年生になったある日。

少しずつ友達と遊べるようになってきた、といつかお母さんから話があった。

お母さんもフルタイムで働いていられる方で、遊びの送迎と塾の送迎とのダブルが物理的に

厳しくなり、さらに本人が遊んでいるところに塾へ行こうと言うと渋るようになった、と話された。

しばらく騙しだまし連れてきたけど、そろそろ限界という頃にお母さんから退会したいと言われた。

コミュニケーションが取れなかった子が友達と遊べるようになった、というのはお母さんからして

大前進で、今は勉強よりも子どもの遊びたい気持ちを優先させたいと言われた。

わたしも本当にうれしかったから、お母さんには素直にここまでこれたことはわたしもうれしいと

伝えた。

そして、「子どもが遊びたいため」を理由に本当に塾を退会した。

上司からはその後かなり詰められたけど、わたしは引き止める気も継続してくださいと言う気も

さらさらなかった。

入ってきた頃のあいさつ1つできなかった姿を思い出したら、大大前進だ。

そして、いつかそのお母さんが

「ぶっちゃけ、本人が行きたくなければ高校も行かなくていいと思っています。

学力よりも、本人が人と関わる力を持てることの方が大事だから、それさえあればもういいです」

とも言っていたことも思い出した。

本当にその信念を曲げずに子どもの気持ちを最優先にしたお母さん。

お母さんの揺るぎなさが子どもの遊ぶ力にも繋がった気がする。

今日の空を見て、高学年になった今、まだ遊べる時間!と思って遊んでいるのかなぁと思った。

2 件のコメント:

  1. とっても良い感じのお母さんだなぁ!
    学力よりもコミュニケーション力が大事って
    本当に自分の見解なんだろうな。
    常識にとらわれずに自分の子どもを見てるんだね!

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  2. Akiへ。

    ほんと、とっても良い感じのお母さんだったよ~!
    勤めていた頃、最初は色んなお母さんたちがいて私もクレームの嵐だったけど、
    ある程度リズムが整い出したらここに書いたようなお母さんたちが増えてきて、
    本当に助かったし、そして何よりも私が色んなことを学ぶきっかけをもらっていたよ。
    「寝てもいいから、子どもがとりあえず『自分のやること(=勉強や学校の宿題)を
    やろう!』と思って嫌がらずに塾に行くだけで奇跡です!」なんて言うお母さんもいて、
    ほんとすごいなその斬新な価値観!と思ってた(笑)。
    常識にとらわれず、自分が大切だと思うものを信じられるって、本当にすごいことだと思う、
    特に日本で!

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