2020年12月12日土曜日

社窓の窓よりーグレートコンジャンクション

「グレートコンジャンクション」と呼ばれる20年に一度起こる星の会合。


今年は、単なる20年に一度のものではなく、そこに公転周期249年の冥王星も近くにあるということで、たしか600年に一度しか起こらないとされる星回り。


グレートコンジャンクションは、公転周期12年の木星と公転周期29年の土星が360度ある天空の同じ位置に並ぶことを指す。


木星は「広がり」とか「繁栄」を司り、土星は世の中の正しさを貫くために努力や抑制を徹底する性質がある。


ちなみに木星の広がりは何も良いものだけじゃなくて、それは何に対してもそうで、悪いものでもそれを増幅させる。


その木星と土星が一堂に会すと、社会の構造が変わったり、国民生活に大きな変化をもたらすとされている。


そこに今回は破壊と再生担当の冥王星も近くにあって、コロナがそういう意味では非常にわかりやすい事象だと思う。


今世の中の色んなものが根底から変わっているのは、日々ニュースなんかを見ていたらひしひしと感じる。


そういう壮大な社会規模のことではなく、個人レベルで見ているものの備忘録として今日は書き残したいなと思っている。







仕事でありえないことがいくつか起こっている。


まさに根底からの再生をかけたようなことが、肌で感じられるレベルで起こっている。


そのことを書き残す。





【ストーリー1】


最初にわかりやすいこととして起こったのは、商品の取扱説明書を作成するプロセスの中だった。


私の仕事は多岐に渡る、会社の資料の各種英訳がメインで、その中の1つが取扱説明書になる。


通常は何百ページとある取説の中の変更部分を担当するけれど、今回は特殊なもの専用の全数十ページの取説で、色んなことが重なって通常とは違うやり方で作ることになった。


元々は、すでに作られた取説があって、そこからの引用で英語もそれを参考にすればいいと言われて資料をもらった。


1年近く在籍してわかったことは、とにかく取説でも他の資料でもかなりいい加減に作られていて、日本語の段階で何も確認せずに英訳できた資料は1つとしてない。


言葉の言い間違いだけではなく、例えば機械の不具合対策の資料にも関わらず、その中に「安全は保証できません」とか書かれていて、はっ\(д;)/!?となって担当者に聞いたら、そんなこと書いたら余計に事が炎上するから消してくださいと言われた。


一事が万事そんな風だから、とにかく明らかにおかしな内容や普通に読んで違和感を感じたら、全て確認を取っている。


確認を取るとほぼ99%は変更になるし、変更にならない時も何かしらの指示は出る。


話は戻って今回の専用取説。


資料を恐る恐る開いたら、3ページほどで「使えない」とわかった。


とてもじゃないけれど、そこにある言葉をまんま英訳に転用したら、意味が通じないだけじゃなく、その後今度は英語からヨーロッパ系言語に翻訳されることが確定している取説で、日本語もこけていたら英語も大コケ、その後の言語なんかもう見るに耐えられない内容になることは間違いない。


量が数ページなら私が担当したけれど、新規英訳で30ページ以上あって、そこで上司と相談して外注翻訳に出すことになった。


英訳されたものを私がチェックして、会社特有の言い方や表現、固有名詞に変更する方法で行くことにした。


で、そうなると、日本語がボロボロだと私が確認する時に本当に目も当てられないくらいに業務の負担が増えるから、そこで私が英訳する視点で日本語のおかしなところを全てつっこむ、つっこんでもう一度取説を再作成してもらうやり方をまずは採用した。


基本的に普段そんなことはしないけれど、どう考えても私が大変になるだけだから、気付いたものは全て何がどう文章的に不具合なのか付箋に端的に書いて、それで原稿作成者にもう一度文章を訂正してもらった。


そうした後、いつもだと大御所たちが見たのか見てないのかわからないけれど、検印を押して原稿発行可能ということで返される。


だけど、私はもうその時すでに3回は担当者レベルで行き来していたから、最後の大御所含む担当者たち向けに書類を回す時、それとは別に手書きでA4の紙にお願いを書いて貼り付けた。


若干嫌味も込めて( ̄∀ ̄;)、自分ともう1人の人2人でそれぞれ3回ずつ見て修正をしたけれども、それでも抜けてるところや誤記があるかもだから、丁寧に見てください、よろしくお願いします、と。


課長と部長の印ももらって、そうやって完成原稿を回した。


そうしたら!


なんと!


完成原稿なのに、さらに追加修正多数で戻ってきた。


全く嬉しくはなかったけれども、この会社に行きだして1年、初めてのことだった。


大革命だった。


いつもは、間違えてようがおかしかろうが、誰も見てないのか印刷した状態の綺麗なままで戻ってくる。


ところが今回は、手書きメモ+部長印が良かったのか(ちなみに部長は苦笑いだった)、じゃんじゃん直されて返ってきた。


おかげで取説は過去最高に綺麗な整った日本語で完成した!!!


大快挙*¨*•.¸¸☆**¨*•.¸¸☆*・゚

2020/12/04





【ストーリー1after


上の話にはその後まさかの続きがあった。


過去最高に整った日本語を外注翻訳に出した。


そうしたら、なんと、翻訳会社から私以上のツッコミ(質問)が山ほど来て、さらに修正することとなった!


私なんかまだかわいいぐらいで、翻訳会社の方からはさらに細かく色々と聞かれて、技術担当者はさらに追加で説明をしないといけなくなった。


もう絶対の絶対にいい加減なものは通用しないんだなぁとそれを見て思った。


そこの翻訳会社は長いこと契約していて、日本語から英語にする翻訳も何回かこれまでもお願いされていて(どうでも間に合わない時にお願いする)、私もその英訳チェックを担当したことがあるけれど、今回ほどつっこまれたことは過去に一度もなかった。


担当者が変わったのかわからないけれど、とにかく細かく見てもらって、本当に日本語的にどうなのかということも、的確に指摘して質問をされていた。


上司と「一般の人から見てもその日本語通じないですよ」って言われてるのに、どうして担当者たちは平然としていておかしいとも思わずにいられるのか、本当におかしい!!!と2人でぶうぶうと陰口を言いまくった。


おかげで、さらに日本語はブラッシュアップされて、本当に英訳チェックが楽になりそう!!と期待が膨らんだ。


日本語を直すことを当初技術担当者から渋られたけれど、ここで直さないと今後何十年と引き継がれるだろう取説が、和文と英文で合ってない、どちらが正しいのかを毎回それに当たる担当者が確認しないといけなくなる、そういうことを避けるためにも絶対に直さないと後々困りますと説得して、それでようやく直すことへのGOサインを得て全て直して整えた。






【ストーリー1after-after


after-after」なんて書いたけれど、そんな英語はないはずで、私の造語。


after-afterなんてことは全く期待していなかったことだけれど、今日12/9この英訳の件が思わぬ方向に転換した。


1年やって本当に初めての出来事で心底驚いている。


翻訳会社から戻ってきた英訳は、基本的に非の打ち所がない。


そう、英訳はプロの仕事だから、きれいな英訳となって返ってはきた。


その取説用に私に与えられたのは当初5営業日だった。


英訳のチェックだけじゃなくて、その後取説の製本ができるように体裁含めたデータの加工も入れての5日間だった。


何せ日本語もきれいになったし、英訳はプロだし、私は余裕で終わると思っていた。


なんなら、今回がAタイプなら、Aタイプを元に内容を変更して作成するBタイプも後に控えていて、2つまとめて5日間ならいける!と頭の中で計算していた。


ところが、蓋を開けてみたら、過去最高に強烈な状況になっていた。


もちろん強烈というのは、過去最低に酷いことになっていた。


まずは、助詞が抜けていたり何かしらの言葉が抜けていて、そういうところの修正が毎ページのごとくあった。


1日10ページ進むか進まないかのペースで、それでも2日目に差し掛かるまでは何とかいけると踏んでいた。


本腰で取り組めるようになって2日目。


私は「えっ(ΦдΦlll)?」ってなった単語を見つけた。


見た瞬間、自分の勘違いであって欲しい!と思うくらい、超フリーズした。


翻訳会社は日本語に忠実に訳してきたから何も間違ってはいない。


むしろものすごく正しい。


だけど、その正しさによって日本語が間違えている可能性に気付いた。


差し障りない範囲で言うと、今回の取説の中には加工品を作るにあたって、加工する原材料と加工後の製品とが何回も言葉として出てくる。


加工前と加工後、当たり前だけど名称が違う。


加工前が木材だとするなら、加工後はテーブルになる。


ところが、日本語は本来「木材」と書けばいいところを「木材テーブル」と書いてあって、それで英語もそのまま「木材テーブル」になっていた。


本当は「加工前の原材料(木材)」でないといけないのに、「加工後の加工品(テーブル)」でもなく、加工前の原材料と加工後の加工品とを組み合わせた新しいタイプの言葉「原材料加工品(木材テーブル)」になっていた。


∑(ΦдΦlll∑(ΦдΦlll∑(ΦдΦlll∑(ΦдΦlll∑(ΦдΦlll


どこをどう読んでも感覚的におかしい。


だって「原材料をセットしてください」なのに、「木材テーブルをセットしてください」とある。


機械に原材料はセットできても木材テーブルはセットできないし、そもそも木材テーブルなんてものは存在しない。


今はわかりやすく木材テーブルと書いたけれど、実際の単語は私は見てもよくわからなくて物は想像できない。


ただ何週間か前に、超仕事もできて英語もできてさらには人柄最高な別の人とやった時、同じタイプの別の機械の取説を作っていて、その時使っていた原材料にあたる言葉とは明らかに違っていた。


そして、その時の加工品にあたる言葉を、今回は「原材料+加工品」という英単語に訳されていて、それで何かがおかしいとわかった。


技術担当者に確認したら、私の読みは大当たりで、日本語が間違えていることが発覚した。


そこからさらに一層全てが狂い始めた。


元々は加工前と加工後の話がたくさん出てくるもので、至るところにその言葉がある。


しかもそれは単なる単語で終わるわけもなく、動詞と組み合わせて文章になっている。


原材料を用意もすれば、原材料をセットすることもある。


当然、用意するのと、セットすることは違う。


「用意する」のは、材料がないところに対して準備することを指すけれど、「セットする」のは材料はあるけれど所定の位置にセットがされてないからその所定の位置に対して準備することを指す。


材料用意と材料セットくらいな差を、私はひたすら文から拾って、直して、それをまた技術担当者から見てもらって、それで本当にGOなら今度は正式に取説を直すようにした。


日本語側が正しくないと私なんかは中身がわからないから、英訳が正しいかどうか判断できない。


だから英訳のチェックのためには、日本語を直さないといけないわけで、私は日本語と英訳とを交互に直すような感じだった。


そんな風だからとにかく進まなくて、やってもやっても終わらないことに内心焦り始めた。


2日目が終わる頃には本気でやばいと思った。


この仕事をして初めて「終わらないかもしれない、納期に間に合わないかもしれない」と思った。


そこで、もうある程度「やれること」と「やれないこと」を見分けてやっていくしか最後はないかもと思ったほどで、進め方については今日朝イチで上司に相談した。


さすがに状況がまずすぎて、部長にも上司と言いに行った。


部長は金曜まで様子見て、そこでどうやってもダメなら関係者に連絡して納期変更する算段に入ることにとりあえず決まった。


一応、英訳だけであれば、内容はさておき文章は仕上がっているわけで、その状態で出すことは物理的に可能は可能であることを部長に伝えたら、そこは部長が「いや、それはダメだから、遅れてもいいからきちんとしたものを出そう」という判断を下した。


そんなこんなで私はまたカオスの英語に戻っていった。







前の日に英語の大師匠、Mr.ダンディに英訳の件で質問したことがあった。


Mr.ダンディは海外部門のトップまでいった方で、今は年齢が達して嘱託になってはいるけれど、社内の陣頭指揮を取る力は相変わらずだし、今社内にMr.ダンディに物申せる人なんているんだろうか?と思う。


そのMr.ダンディは気さくな上、親身になってくれるし、本当に難しいことになるといつも盾になっていわゆる役職者たちと交渉してくれる。


前の日にMr.ダンディに質問したら、いきなり何の説明もなく新しい見慣れない言葉を書いても読み手には伝わらないから、担当者に言って一文その言葉に対する説明を書いてもらうようにと言われた。


そのページは他にも元の日本語がかなり微妙で、すごいピンポイントの位置を説明しないといけないのに、その位置の説明が怪しすぎるものがあって、案の定翻訳会社は直訳してきたけれど、それも英語はきれいでも何か絶対的に違う感じが滲み出ていて、そこも担当者に説明を聞いて英訳し直した。


それも含めて見て欲しくて、50ページある英訳の中のそのページだけをコピーして持って行った。


私は簡単に説明して帰ってくる予定だったのが、Mr.ダンディはその1枚の英訳と日本語を見ただけで「意味がわからない、こんなのじゃ絶対に伝わらないよ相手に」と言う。


できる限りの説明はして、あとはお願いしてきた。


トイレから戻ると、隣りの席のパートさんから「武士俣さん、Mr.ダンディが来て、例の取説の原稿持って行ったよ」と言われた。


カオス過ぎる机の上からよくぞ見つけ出せたな〜と感心したけれど、それは何回目かの直しの途中のもので、それで慌てて今朝最新版だった日本語の方を持って行った。


それはお昼休み前だったけれども、お昼休み入ってすぐにMr.ダンディが私の席までわざわざ来て、原稿が酷過ぎる、あれは怪文書だなと言いにこられた。


もう少し見てまた武士俣さんに連絡するよ、と言われてその場は終わった。


いつもならその量なら1時間もしないうちに持ってきてもらえるのに、今回は2時間くらいしても何も音沙汰がなかった。


他にもやることはてんこ盛りで忙しいんだろうなぁ、まぁいいかと思って他の英訳を進めていたら、Mr.ダンディから電話がきた。


あまりにも内容が酷すぎて、今回はそれで出すしかないだろうけれど、取説は1から作り直ししないと本当にまずい、というのが第一声だった。


ついては、私のところの部長と技術部の部長、技術部の課長、担当者(私が直接質問する相手)と武士俣さんを呼んで打ち合わせをするから、今は課長が都合つかないから彼が戻り次第また電話するから来てねと言われた。


だいぶ慣れたけれど、相変わらずひっくり返りそうだった。


どうして大御所の人たちの集まりに私も参加するのか、普通にそこそこの地位の社員ですら呼ばれない人は全く呼ばれないのに、おかしな話で派遣の私が英語担当というだけで呼ばれる。


さすがに私だけ行くのはおかしいから係長も巻き込んで行くことにしてもらった。







スケジュールが整って関係者で集まった。


部長たちは忙しいようでいなかったけれど、そして自分のところの部長は一瞬だけ来て長くなりそうなら他のことで今手が離せないから席に戻りたいと言って、戻って行った。


ちなみにタイミングが悪くて、私が唯一ぎゃあぎゃあ騒いでいた時に来たから、余計と「これはどうでもいい会合」と判断された気がしてならない。


すでに話は始まっていて、全体の構成がまずおかしいという話から始まった。


安全性や機械についてのそもそもの説明がことごとく抜けていて、それをMr.ダンディは指摘していた。


ごもっともな話で、きちんと構成的に必要不可欠なことは絶対に入れなきゃダメだとMr.ダンディは言った。


短い時間でその足りないとされる内容の一部の原稿まですでに下書きしていて、それを読み上げて聞かせてくれた。


ふむふむと思って聞いていて、そしてその後も前半の話を色々聞いた後、Mr.ダンディが突然私の方を見て言った。


「っていうことだから、武士俣さん、その今話した部分は追加で英訳になるから頑張ろう!私も一緒にやるからさ!」


私はあまりの衝撃に即答で

「無理です、無理です、無理です!」

と口走った。


50ページある英訳のうちまだチェックそのものが20ページ終わったか終わらないかで、とりあえず納期までその今手持ちの英訳さえも終わるかどうか怪しいのに、そこに新たに英訳追加なんて、どう考えても無理だった。


その現状を具体的に必死に訴えていた最中に部長は来て、私の声しか出てないからそれで「この話は重要じゃない」と思われたんだと思う。


部長がいなくなった後、Mr.ダンディが

「武士俣さん、時間ならあるだろう」

と言う。


私は「出荷が来週火曜日で、今作ってるAタイプができないと、火曜日に必要なBタイプも作れないので、それをダブルでやるのと、そもそもの英語と、さらに日本語の間違いを見つけるたびに日本語の修正とをやったら、普通にAタイプすらも終わるかどうか微妙なところです」と答えた。


余談だけれど、朝係長に相談して、とりあえずBタイプを火曜日出荷に間に合わせるためには通常の進め方では絶対に無理だから、超イレギュラーなことを提案とお願い、さらには現状報告を、関係者にメールに書いて送ることになった。


そんな会社の一大事に対しても、派遣の私が提案・お願い・現状報告を書いて、それを大御所含む関係者たちに配信する、ということも慣れてはきたけれど相変わらずイレギュラーなことをした。


そこでも伝えていたから、Mr.ダンディ以外はその場にいたみんなにとって周知の事実だった。


そうしたらMr.ダンディが説明を始めた。


「いや、これは認定も必要な機械で、その認定取るのに2ヶ月とかかるから、だから今すぐ作らなくてもいいんだよ」と返された。


何の話かわからずにポカンとしていると、Mr.ダンディが続けた。


私が来る前に課長から事情を聞いたら、納期は火曜日じゃなくて認定が下りたらで大丈夫だから2月末で全然間に合うと言われた。


ますますぽっかーんな私を見て、Mr.ダンディはすぐに気付いてくれた。


「課長、武士俣さんに伝えてないの!?」


そこで初めて私だけじゃなく自分のところの部署には、認定申請と許可の関係でそもそもの納期が延期になってる話が来てないことが判明した。


それについてはMr.ダンディがしっかりと課長に「そういう大事なことは絶対に伝えなきゃダメだ。武士俣さんが現実的に認定申請に必須の取説を作ってる人で、その彼女は火曜日とずっと思っていてそれに合わせて動いて間に合わないって言ってたわけだから、そういうことは必ず連絡しなきゃダメだ」と叱りながら言い聞かせていた。


スケジュールの話も驚いたけれど、それ以上にMr.ダンディが入ったことで全く違う流れが生まれたことに驚いた。


Mr.ダンディは改めて私に確認した。


「武士俣さんそういうことだから、そして私も手伝うからできるよね?」


はい、と今度はきちんと返事した。


結局のところ、Mr.ダンディがおかしなところや足りないところは和文を全部直して、それを私が英訳して、さらには最後和英合わせてMr.ダンディがチェックしてくれることになった。


そして、和文のおかしいところは、Mr.ダンディが全部課長か技術担当者のどちらかに確認を取ると自ら明言していた。


打ち合わせの後、細々とした事務的な話をMr.ダンディとした時に、日程の話が何もかも私が聞いていたことと噛み合わず、さらには私がAタイプやBタイプの一連の流れを話した時に結局のところ何なのか全く話が見えなくて、それもすぐにMr.ダンディが私を連れ立って課長に確認してくれた。


本当は係長がその係だから係長を呼んできていいかを聞いたら、「いや、いいから、大丈夫」と言われてついて行った。


そうしたらその後きちんと係長にも、課長に確認を取ってわかったことを全部説明してくれた。


その少し前に係長もそれを後で確認しなきゃだから武士俣さんも一緒に行こうと言われていて、課長は私たち2人なら塩対応且つ間に合わないことも下手したら何かしら横やり的なことも言われたかもだけど、何せMr.ダンディが全て確認して私のわけのわからない説明もきちんと汲み取って1つ1つ丁寧に聞いてくれて、さすがに会社のトップ集団に上り詰めた人に聞かれているわけで課長も非常に温厚にきちんと対応していた。


本当の本当に助かった。


部長にはどうする?私から言おうか?とMr.ダンディが言って、私が間髪入れず「Mr.ダンディが言うのが、絶対に一番いいです!!!」と即答した。


この件に関して実は私はすでに何回も部長のところに状況報告と相談に行っているけれど、全然聞く耳を持ってもらえないのと、何かあれば何とかしてくれるのはわかったけれど、本当に私が一言「もう絶対的に無理です」と言わない限りは、結果のみを知りたいようであからさまにぞんざいな扱いだった。


部長が知りたいのは、きちんと納期に間に合うかどうかで、他の細かいことは普段もだけど話をしても基本「それはいいから」と言って遮られる。


一度途中経過でかなり状況がやばすぎてそれを言いに行った時は(もう2ヶ月以上停滞していて、納期まで日がなくて間に合うのかどうか私ではもはや判断できないところまでになった)、普段「無理です」と言わない私が今のままでは無理ですと言ったら、さすがに事態の重さが伝わったようで、その時は部長も動いてくれた。


部長にもMr.ダンディがすぐに報告に行ってくれた。


部長も絶対に頭の上がらない相手で尚且つMr.ダンディは絶対のものを突きつけるだけじゃなく有言実行するから、部長にもすぐ伝わったようだった。


細かなことは知らないけれど、部長だって変なものを出すのは絶対にダメだと言い切る人なわけで、Mr.ダンディの話にはすぐに納得したんじゃないかと思う。


Mr.ダンディの立ち回りのおかげで、全ては事無きを得た。





【エピローグ】


私はまだまだこの案件にかかりっきりになるけれど、本当にすごい流れの中にいるとものすごく強く感じる。


まさか取説の作り直しに最後転じるなんて、誰が予想できただろうと思う。


ましてやはじまりは、たった1枚にも満たない英訳だった。


元々その英訳の中にあった「位置」についての説明に疑問を抱いていた私は、あの時の違和感がまさかこんな結末を迎えるなんて思ってもみなかった。


2ヶ月前にその取説を初めて見た時に、見た瞬間から何を言っているのか全然わからなかったし、さらにはそれが英訳された文章も読んだらさらに一層混乱した。


係長も長いことこの仕事をしているけれども初めて見る表現で、多分何か説明が足りないか表現を間違えているかだと思うとは言っていた。


言うなれば、そちらのたった1つの文章の方が、つい前の日にMr.ダンディに聞いたら説明不足だから担当者に追加で書いてもらうように言われて足された文章よりも爆弾じみていた。


実際に前の日だって同じページをMr.ダンディは見ている。


だけど、その数行上にある爆弾1文は私もその時は何も言わなかったからMr.ダンディも特に見なかった。


ところが追加の文章だけじゃなくその爆弾1文も怪しいから英訳をチェックして欲しい、と私が言ったことで一気に流れが変わった。


その爆弾1文はそれ1文だけでもすごい破壊力があったけれど、じゃあ前後の文章を見たら通じるかと言えば多分技術がわかるMr.ダンディみたいな人が読んでも伝わらなかったんだと思う、それで他の部分を見てその爆弾1文周辺を理解するために取説1冊丸っと持って行かれた。


まさかMr.ダンディが総ページ数80ページは確実に超える取説の全てに目を通すなんて、全くもって想像できなかった。


そんなのは誰も想像していなかったし、さらにはこんな展開になるなんて想像を遥かに超えていた。


ちなみに打ち合わせの時に話を聞いていて、初めてものすごく色々とやばいことがわかった。


私は技術的なことは何一つわからないから話を聞くまで事の重大さが文章からは何も感じられなかったけれど、Mr.ダンディの話を聞いていて、どうして取説を1から作り直さなきゃダメだと言い出したのかよくわかった。


安全や機械本体の特徴、特殊な使い方をする故の重大なお知らせがことごとく抜けていて、それ故にMr.ダンディは1からの作り直しをしなきゃ絶対にダメだと言っていた。


そりゃダメだわ、と話を聞いて私も即納得できたくらいの重大な欠陥だらけの内容だった。


さらに、何でスケジュールを知っていた課長から何も知らせてもらえなかったのかわからないけれど、もしかしたら課長は私が間に合わせるためのお願いと提案をしたことで、内容云々より間に合わせることを優先させたかったのかもしれない。(ちなみに課長は同じ課ではないから、課をまたいだ連絡が漏れるなんてのはあってはいけないけれど、この会社あるあるでしょっちゅうあること。)


間に合えば怒られないし、納期の延期は社内で反省文提出じゃないけれど色々面倒な手続きがあるらしく、それをしなくて済むようになる。


今回の一連の流れを見て、このグレコンの底力を垣間見た気がした。


絶対的にダメなものは、どんな手段を講じても止められる。


それは人智を超えたところで色んなことが調整されている、としか私には思えない。


だって既に6回目の修正に入っている取説で(この会社はそんなにも修正をしないのが通例だし、ましてや私の英訳や取説担当者が和文を技術担当者に確認して大幅に書き換えるなんてほぼほぼしない)、過去最高にテコ入れされてるのにも関わらず、その状態でやり直しを命じられたわけだから、尋常じゃない。


でも代わりに、絶対に何とかしなきゃいけないものはスーパーウルトラCみたいなことが起こる。


それも何の努力もせずに勝手に起こってくる。


私が2ヶ月グダグダと言ってもここまで動くことはなかったのに、Mr.ダンディの立場的なものもあるにしても、ここでたった数時間の中で一気に物事が動いた。


本当に目を見張るくらい驚いた。


そして感動した。


きちんと必要なことなら動くんだというのもわかったし、そのためには自分は自分のできることだけをひたすらしていたらいいんだというのもわかった。


わからないところはひたすら担当者に確認していたから何でも即答していたし、変更になったところはMr.ダンディの厳しいつっこみに対しても私は誰よりも明確に何がどう変わったかを説明できた。何せ和文の修正6回目だから、否が応でも読んでるから知っている。







打ち合わせの前に、私の席の脇の通路をもう1人の私の英訳の師匠、トムさんが通り過ぎた。


トムさんを呼び止めて、事の顛末を伝えた。


2ヶ月くらい前だったと思うけれど、Mr.ダンディが体調不良で何日か早退や休みが続いて、でもクレーム案件の英訳があって誰かしらに見てもらわないとで、それで上の了解を取ってトムさんから添削をしてもらった時があった。


その時に当たった資料の和文が本当に酷すぎて、トムさんは何よりもその酷い和文に対してそれをそのまま誰も確認せず上の者たちが勝手にそれでGOサインを出すことについて激怒していた。


酷さに関しては私は百発百中酷いのしか当たらないから、もはや少しくらい変でも驚かないし、むしろまともだと逆に驚くぐらいだけど、トムさんはそうしたクレームの時もそんなに酷いとは思ってなかったようだった。


それであまりにも酷いから(たしかその時も大幅に変更した記憶がある)、私がいくら訴えても何も変わらないから、トムさんから部長に話をしてもらえないかとお願いした。


せめて上の人たちや担当者たちが日本語を読んで内容を確認しないと英訳はもっと酷いことになる、なんなら誤訳になってさらなる問題を生み出すことも、私ではなくトムさんが言う方が説得力があると思った。


だけど今回事態が思わぬ方向に動いたことと、Mr.ダンディが動いてくれて物事が良い方に行っているから、その件についてはもう大丈夫ですと伝えた。


トムさんはとにかくそのことは気になっていたこと、そして今の状況を聞いてものすごく良いことだと言ってくれた。


この会社でそんな風に物事が動くことはまずないから、そのようになっていることは本当に素晴らしいし、そうやって物事が改善されていく大きな一歩だと言ってくれた。


私は何が嬉しかったって、そんな風にわかってくれる人がいてくれることだった。


どう考えても面倒なことになってるわけで、多くの人はそれを快く思わない。


なんなら敵や反対意見を持つ人の方が圧倒的に多いと思う。


だけど、トムさんはそれを本当に喜んでくれて祝福してくれて、さらには本当に良いことだと正当に評価してくれる。


あの会社でそういう人に当たることは本当に珍しくて、奇跡のような巡り合わせだと感じている。


そもそもトムさんは自分で英訳もできるから、基本的に私がいる部署とは直接やりとりすることが一切ない。


席も私が体育館級の広さを誇るフロアで、一番はじと反対のはじくらいに離れている。


そもそもは1年前、いきなり1人で英訳デビューになってしまった私が、上司が配慮してトムさんに英訳の面倒を見て欲しいとお願いしてくれたことがはじまりだった。


そうやって繋いでもらった縁で、今でもずっと何かあれば色々助けてもらっている。


私のその当たるもの当たるものが毎回酷いから、トムさんも本当に全力で助けてくれて、さらには会社のやり方でおかしいところも全部見てくれて一緒に意見を申し出たり、もしくは秘密裏にこっそり良い風にテコ入れしてくれたりいつもしてもらってる。


そんな風に色んな状況を知っているトムさんから、今回の状況を良いことだと心から言ってもらえるのはとっても嬉しかった。







2020/12/11()


Mr.ダンディの和文取説の直しが終わって、課長と担当者と私とが呼ばれて打ち合わせに行った。


ようやく完成形の見本が見えてきた。


Mr.ダンディの赤ペン先生級の手書き添削を課長と担当者とが打ち合わせの後チェックをして、それを今度は私の席に持ってきた。


その時に私が担当者に確認しながら直した日本語の1つが間違えてることが発覚した。


そこで初めて課長からきちんと技術的な説明を受けて、それでようやく理解できたものの、かなりやらかしたことがわかった。


そこで1つの言葉をすべて拾って(ちなみに合計40箇所(;;))そこにマーカーをして持って行くから、それが正しいのか間違っているのかを書き込んでもらうことを提案して、それで定時が見える頃にマーカー入りのものを持って2人の元へ戻った。


仕事を増やしてすみませんと素直に謝って(謝るのは基本抵抗ないから何ともないけれど、今のところはザ・男社会だからか謝るのが負けと思うのか謝る人が少なく、おかげで先に謝ると空気をかなりきれいにしてくれる!)、それで原稿のチェックをお願いしてきた。


しばらくして、2人連れだって私の席に再度やってきた。


すごく当たり前のことみたいだけれど、実は全然違う。


課長はこれまで基本的に担当者に丸投げで、実務はほぼノータッチだった。


まぁ管理職ゆえ仕方ないにしても、自分が担当する機械なのにそれってどうなんだろう?と思った。


ところがMr.ダンディの参入によって、さすがに課長も丸投げとはいかなくなったのと、幾つかの点はMr.ダンディが課長を名指しで文章を新規で書き足すように言っていたのもあって、課長自らが動くように変わった。


戻ってきた時は、課長が私に全部説明してくれた。


それも、本当に懇切丁寧に説明してくれた。


私の席はフロア全体の中の四隅の一角で、私のすぐ後ろのスペースには特殊な大きさの紙を印刷する機械があって、そこに行く人たちは私のすぐ脇の通路を通過するけれど、基本的に下っ端側の席と通路だから(平行してある反対の通路は上席通路)目立ちはしない。


だから、言い方を悪くすると、私や私の座席位置は自分を良く見せる場所や相手ではないわけで、適当な対応でも問題ない。


だけど、課長は本当に丁寧な対応をしてくれて、それはとても嬉しかった。


敬って欲しいとかそういうことじゃなくて、仕事をする上できちんと私の存在そのものを対等に扱ってくれてるみたいで、そういう姿勢を見せてもらえることが本当に嬉しかった。







この取説は、この後さらに旋風を巻き起こす起爆剤になるように思う。


最初に原稿をもらった時から1つ私が吹き出した日本語がある。


元々英訳も付いていた文章の1つで、その英訳もまた日本語に負けじとすごいコメディみたいな内容になっていて、さすがに私はそれをそのままにしておくのはどうかと思って、技術者たちから確認のために見てもらう用に、その日本語と英語のおかしな点を指摘したメモを付けて渡した。


誰が見てもおかしい内容で、私の指摘は通って(通らない方が逆に問題だと思う)、それは訂正されて返ってきた。


それには続きがあって、Mr.ダンディに日本語の原稿を渡した時に、その面白すぎる文章についても雑談の一環で言った。


私は単なる雑談だったけれど、Mr.ダンディが読んだら、直されたところだけじゃなくその前後もおかしいということを指摘した。


これはまずいとなって、Mr.ダンディが修正をした。


で、今日9日の打ち合わせの時にもそれは話題に出て、課長が確認して正しい文章を和文英文の修正をしている私に知らせることになった。


打ち合わせの時もMr.ダンディも課長も声を揃えておかしいと言っていたから、しかも専門的な観点でも完全にアウトの内容のようで、それが正しくなるのは良かった、などとなっていた。


ところがどっこい。


課長がきちんと調べたら、なんとそれは安全に関する定型文で変えられないということが判明した。


誰が見てもおかしい内容なのに、昔定められたのか何なのか、それで通用している。


みんなが声を揃えておかしいと言っているのに、昔からの風習か何かでそれでまかり通らせている。


Mr.ダンディはまだそのことを知らない。


だから週明け、事実をまんま伝えに行く予定。


本当にこのままにするという決断は、すなわち会社の在り方を本気で問われる。


反対に変えるなら変えるで、アホみたいに色んな手続きや煩雑さが後に発生しそうだけれど、そしてその決定に至るまで社内の長ったらしい決裁に上がるまで相当な修羅場が発生すると思うけれど、いずれにしても絶対的なものしかこの後の時代には引き継げないはずだから、その大爆笑だった1文がどうなるか見ものだなと思っている。


まだまだこの強烈な取説は延々と色んなものを見せてくれる気がしている。


はじまりは1文ないし2文の不具合がまさか取説全体に及んでの今になる。


そして、このみんなで総ツッコミだった1文が今度はタブー領域に近かった会社の暗黙の了解でやり過ごされてきたところにメスを入れていく気がする。

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