2020年5月19日火曜日

サバイバルイングリッシュ

自分の能力を正当に認めてもらえない、もしくは過小評価されることはどうやら腹立たしいらしい。

なんだかモヤモヤしている。

「らしい」と書いたのは、自分でも自分が怒っているのか、悲しんでいるのか、納得していないのか、よくわからないから。

だけど、ずっと引っかかっているのは本当。

気になったことは2つ。

今日英訳依頼がやってきた。

ひとつ目に気になったのは、頼まれた時の言われ方だった。

「いくつか候補を書いてくれたらまたこちらで選ぶのでそうしてください」

これはごくたまにする方法。

どれが正しいのか、そもそも合っているのかもわからない時は、選択肢をいくつか書いて渡す。

そしてあとは技術担当者たちで選んでください!のスタイルにする。

但し、それは私から提案することはあっても、相手から提案されることはない。

そもそもそこに違和感だった。

その彼の中での私の英語力はかなり低いことになっているらしい。

言葉の節々から感じられる。

2つ目は、私の呼ばれ方だった。

データは某フォルダに武士俣さん宛てに入っているから、それを使ってくださいと言われて、彼が去った後某フォルダを開いた。

驚いた。

「技術部佐藤→派遣武士俣さんへ」

未だかつてその某フォルダにおいて「派遣武士俣さんへ」と書かれたことは一度もなかった。

何百人いると言えども「武士俣」なんて私しかいないだろうから、普通に「英訳事務部武士俣さんへ」で良くない?と思った。

他の人たちは「武士俣さんへ」か「英訳事務部武士俣さんへ」と書いてくる。

どうしたらそんな風に書けるのか不思議でたまらない。

今英訳担当者として私含めて3人在籍している。

だけど1人は能力はバッチリでも時短勤務でどうしても勤務上の縛りがあるし、もう1人は勤務上問題なくても実践としてやれる状態に全くない。

だから実質、残業もできて英訳もできるのが私しかいない。

これがもし2人のどちらかにお願いするなら、「正社員鈴木さんへ」「正社員高橋さんへ」などとするんだろうか?

もちろんそんなわけはないわけで、どうして私だと「派遣武士俣さんへ」なのだろうか。

色々モヤモヤした出来事だった。





うって変わって、その頼まれた英訳を今東京から疎開中のMr.ダンディに質問に行こうと思って、今からそちらのオフィスを訪ねても良いかをまずは電話して聞いた。

Mr.ダンディは二つ返事で承諾してくれて、手土産の小さなお菓子を持って伺った。

Mr.ダンディには本当に可愛がってもらっている。

Mr.ダンディの相棒、Mr.紳士にもご挨拶して、そして色々と英訳した土台を持ってどうしたら良いかを確認した。

2人とも本当に仕事一徹のキチッとしたバリバリのエンジニアでありながら、冗談を言ったり可笑しな会社についてのブラックジョークを言ったりする面白い人たちで、みんなから細かいから煙たがられているけれども、私は2人ともとても好きなタイプの人たちだったりする。

仕事に妥協がないところが本当に良い。

私は何せワケワカメでいつも行くから、カタカナ用語なんかは全てそのまま直訳する。

今回もカタカナ用語を直訳したものがあって、あくまでも私としては初めて見た単語だからそれでいいのかどうかを聞きたいだけだった。

ちなみに今回の英訳資料は、Mr.ダンディとMr.紳士のツートップが裏側の黒幕的最終印を押す人たちになっている。

本当は2人に直で聞くのはよろしくないようだけれど、社内のごちゃごちゃした決まりのところを通過して色々おかしくなってさらに2人からまた容赦なく添削されて私も二度三度と英訳するくらいなら、さっさと2人のところに持って行って確認した方が断然速い。

そこの了承さえ取れていれば、印籠のごとくものすごい速さで大御所承認が終わる。

それがわかっていたのと、今回のはそもそも一刻も早く仕上げないといけないものなのに英訳のせいで遅れるのは嫌だから、それもあってさっさとダブルMr.のいる部屋に持って行って見てもらった。

その中の1つのカタカナ用語を見て、Mr.ダンディが即座に反応した。

「これってどんな意味だ?」

英訳は直訳したからこれ以上ないくらいストレートな感じに仕上がっていたけれども、そうではなくそもそもの日本語が変なようだった。

たしかに私も初めて見たカタカナ用語だったけれども、そんなのは日常茶飯事にあるから私は気にもならなかった。

Mr.ダンディがMr.紳士に「紳士さん、これ何だと思う?」と尋ねた。

Mr.紳士も聞いたことないと答えた。

この道40年以上の2人が見たことも聞いたこともない造語だったようで、私も何か聞いているかを聞かれたけれども、それは知らないと答えた。

Mr.ダンディは内線一覧表を開いて、トップから順に電話した。

4人かけても誰も出ず(本当に忙しかったのかどうかは不明…と思いながら見ていた)、ようやく一番ペーペーの今回私に英訳依頼をした佐藤さんに繋がった。

佐藤さんは中身も確認せず英訳を頼むことに注意を受けていたけれども(そりゃそうだ)、中身を確認してMr.ダンディに折り返すように言われていた。

私が部屋を出ようというタイミングで折り返しがかかってきて、事の次第が判明した。

私も聞いたけれども、どこをどう聞いてもそのような意味にはならない日本語が充てがわれていることがわかった。

2人もこれじゃおかしいと言って、2人で名前を相談して変更した。

2人にお礼を言ってあとにして、今度は佐藤さんのところに行った。

事の顛末を話して、日本語も変更する旨を伝えたら、「向こうの了承得てるんですよね?向こうがそうだというものに合わせて直してください」と言われた。

2人の言葉の引力と言ったらない。

今回も大御所承認に出す際、また一言「Mr.ダンディとMr.紳士に確認しました 武士俣」と書いた紙を足そうかと思う(よくはわからないけれども、これをすると誰からも突っ込まれないようでさっさと綺麗に回る)。

2人の仕事ぶりは私は元々英訳関連でやりとりすることもあって、黙っていても目に入る。

絶対にいい加減な仕事はしないし、きちんと確認して最終判断をしているのも毎回部屋に行く度に見ているからわかる。

男の人たちは細かいのを嫌がるけれども、そうじゃなくてそもそもの考え方が違う。

2人が本当に厳しいのは、お客さんとやりとりを直接するからこそ、契約1つ取ることの又はクレーム1つ対応することの大変さを知ってるからだと思う。

先週もMr.ダンディを頼った時に、教えられた。

私の英訳について云々ではなくて、手順書を見てこんな風に言った。

「今回は手順書だけがお客さんの元に行く。それも代理店を通すから末端の人たちがどんな人たちでどんな(技術的)レベルかがわからない。
もし手順書を適当に作ってしまったり訳を間違えたのなら、それが二次障害を引き起こす可能性がある。
例えば、間違えて機械を動かしたり、本来取り付ける場所ではないところに部品を取り付けて結果機械が故障したり。そういうのを防ぐためにも、きちんと手順書を作るのが大事なんだ」

超基本中の基本を当たり前のように言っていた。

だから私は絶対の信頼を持ってMr.ダンディを頼りに行く。

単なる英訳じゃなくて、きちんと末端の人たちや会社として余計なクレームや責任問題を負わなくて済むようにきちんとすることを徹底している。

佐藤さんとのやりとりはモヤモヤしたけれども、Mr.ダンディとのやりとりでそうしたモヤモヤはない。

Mr.ダンディは私が派遣と知っているけれども、それで変に区別することもなければ、社員同様に同じように手厚くサポートしてくれる。

肩書や立場ではなく、人として会社として一緒にがんばろー!という気持ちに溢れているし、それがいつも伝わってくる。

だから私はMr.ダンディを嫌だと全く思わないし、むしろ本当に頼らせてもらえることがものすごくありがたくラッキーなことだと思うから、色々孤立無縁で始まった英訳もおかげさまで何とかなっている。





先週Mr.ダンディの話にも出た手順書の担当者から今朝メールが入っていた。

担当者の物腰柔らかさんは、ヨーロッパ駐在もしたエンジニアの人だった。

本当は物腰柔らかさんが担当ではないんだけれど、本来の担当者作文苦手くんが連チャンで休みだったから、代行で物腰柔らかさんを頼ることになった。

作文苦手くんは部長からあまりの日本語力の低さに注意を受けて書き直しになって、その書き直しになったものを英訳に回されてきたけれども、やっぱりそれもものすごくハテナだらけの文章だった。

正しくは名詞のオンパレードで、「で、だから何?」というのが常だった。

例えば「◯◯な状態」というのがいくつもあった。

えっΣ(꒪◊꒪ )))) ?

状態を作るの? 
それとも勝手にそういう状態になるの?
それとも写真が「◯◯な状態」って意味なの?

当たり前だけど、上のどれだったとしても、確実に動詞が変わってくる。

さらには「垂直」と「上下」と区別された専門用語が出てきた。

Σ(꒪◊꒪ )))) ?

垂直はよく出てくるからすぐにわかった。

上下は初めて見た。

だから物腰柔らかさんのところに行った時、最初の質問は「この上下って垂直と何が違いますか?アップダウンって訳していいですか?」だった。

物腰柔らかさんはわかりやすいぐらいに苦笑いして、ちょっと待ってください、と言ってすぐ隣りの上司に確認を取ってくれた。

ちなみに上下の正体は「角度」だった( ̄∀ ̄;)。

そんなこんなをいくつも質問して、なんならその後も3回か4回世話になった。

物腰柔らかさんは、私の持って行った資料の中の私の英訳のたたき台を見てくれたことがあった。

ヨーロッパ駐在だったから、英語もさぞかし堪能なんだろうと思った。

本気で読み込んで「この内容で大丈夫です」と言ってくれたから、本当に知ってる人なんだなとわかった。

で、物腰柔らかさんから、英訳の対応ありがとうございました、英語も確認して大丈夫だったのでそのまま海外部門へ引き継ぎましたとメールが来たものに対して、私もお礼のメールを書いた。

物腰柔らかさんによれば、今回の英訳はイタリアに渡るようだった。

本当にいつも英訳するのが怖くて、毎回全文Google翻訳をかけていて、だから技術も英語もわかる人から見てもらえることの心強さと感謝の意を伝えた。

それに対して物腰柔らかさんはこんな風に返してくれた。

「自分のはサバイバルイングリッシュで、それでお役に立てたのなら嬉しいです」

そんな風に書かれてきた。

本当にこれは嬉しかった。

多分物腰柔らかさんは、私の英語を見て私のレベルもわかったと思う。

物腰柔らかさんが駐在した国は英語圏じゃない。

英語圏じゃないところで英語で仕事をしないといけなかったんだと思う。

本当に言語で苦労しただろうことはなんとなく想像がついたし、言葉が伝わらない悔しさや虚しさも多分知っている人だと思う。

しかも専門は技術なわけで、英語じゃない。

入社にあたり英語力も必須だったとは思うけれども、バリバリ英語ができます!という感じとは違ったんじゃないかと思う。

本当に苦労しながら言葉でのやりとりをやった人なんじゃないかと感じた。

「サバイバルイングリッシュ」

その一言に全てが表れてる気がした。

そして、私にしてくれた対応も本当に丁寧だった。

私が訳せるように訳しやすい言葉を追加で教えてくれたし、なんなら混乱の元となる余計な日本語はカットして英訳したらいいことも教えてくれた。

もちろん質問しているわけだけど、質問したからと言ってそのように教えてくれた人はこれまで皆無だった。

物腰柔らかさんが初めてだった。

日本語を見てそれを英訳するとするなら…という視点で見てくれたのは。

トムさんやMr.ダンディとのやりとりとは違っていて、2人からは最初から英訳1本で見てもらっているけれども、それは特例中の特例で、いつもは基本私1人で相手の技術者の日本語を噛み砕いて訳さないといけない。

だから、物腰柔らかさんのような対応は初めてだった。

「サバイバルイングリッシュ」と言うだけあって、わからないことを何とかする大変さを体で知っている。

その大変さを知っているからこそ、今回の日本語を英語にする難しさもわかるだろうし、ましてや私みたいに技術を知らない人間が英語だけで何とか形にする難しさもわかってくれた気がした。

私のしていることに敬意を持ってくれてるのは何となくの雰囲気で伝わる。

派遣だからだとか、技術知らない=英語もダメなんていう風に見てはいない。

本当に人として対等に扱ってもらえたように感じる。

さらに、「海外駐在したんだな」と感じる雰囲気が漂っていた。

駐在というよりも、海外に住んで、おそらく人種差別も受けただろうし、自分の言語力に悔しい思いもしただろうからこそ、相手と向き合う時まずは「人として対等に接する」ことが体に染みついている。

それを感じる。





冒頭に書いたことは本当にモヤモヤした。

私は私でやってきたことがあるから、それをきちんと見ないで表面的なことだけで判断されることも悔しかったり、どこかで怒ってもいる感じはする。

正当な評価ではないことに腹が立ったのだと思う。

だからこそ、Mr.ダンディや物腰柔らかさんとのやりとりに私は癒された。

2人から英語の指摘を受けても私は全く嫌じゃない。

なぜなら、2人はあくまでも「技術的な内容と違う」点を教えてくれるから。

英語の注意とは違う。

はたまた私をうんと下に見て対応しているのとも違う。

どこまでも対等に扱ってもらえてるのが、何も言わなくとも伝わってくる。

佐藤さんは知らないからそういう振る舞いだとしても、人としてめちゃくちゃ感じが悪い。

特に私なんかはどこに行っても「人がすべて」みたいな考え方をするし、仕事で大事なのは直接の能力ももちろんだけれど、それよりも人間関係の方だと思っているから、余計とそれを感じる。

なぜなら派遣である前に、はたまた役職者である前に、どの人もまずは人だし1人の人間だから、人としての部分をやらかすとその後も色々やりにくい。

自分がその部分を大事にしているのもあって、それを踏みにじられるようなことも嫌だったんだと思う。

私は佐藤さんの良さも知っているからこそ、残念に感じる。

何はともあれ、これからも人としての部分を大事にしながら仕事をしたいなぁと改めて思った。

そして心がやさぐれそうになったら、物腰柔らかさんのような、Mr.ダンディのような人たちを思い浮かべて何とか乗り切ろうと思う。

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