2017年11月12日日曜日

東京メモリーズ

これまで東京で訪れた場所を頭の中で思い返していた。

来月に予定している東京滞在に向けて、これまでとは違った場所を訪れたくて、そのための過去からのダウンロードを頭の中で開始していた。

最初に引っ掛かったのは、8年前の夏のある日の場面だった。

 

最初に思い出したのは、自殺未遂をして助かった男性が自らの体験談をマンションの一室で語っていたシーンだった。

当時私は転職活動をしながら同時に心理学やカウンセリングを学べるスクールも探していた。

いくつか気になったスクールには体験入学的な形で実際に足を運び、その時もその1つだった。

まさか単なる体験入学の場で、しかも少しだけ遅れて行ったら、いきなり私とそんなにいくつも年の変わらなそうな男性が自分が自殺しようとして実際にそうしたけれど、気付いたら死んでなくてベッドの上で助かってしまったことを知った話を聞くとは、想像すらしていなかった。

そもそも何で遅れて行ったんだったかな…と記憶をたぐりよせたら、当時の1日の記憶がよみがえってきた。

 

前の日の夜、学生時代の男友達2人と新宿で飲んでいた。

1人とは数年ぶり、もう1人とは10年ぶりぐらいの再会だったかと思う。

そもそもの集合時間が遅いこともあったけれど、3人共それぞれの帰路に向かう終電を逃してしまった。

そこで3人でどうする?とかいう話になったんだと思うけれど、誰かが「普通のホテルはもうこの時間からは絶対に無理だから、逆にラブホに行ってみよう!男2人女1人の3人でラブホに行くなんてそんな機会ないから行ってみよう!」と言いだして、3人で歌舞伎町の中のラブホを当たり始めた。

自分の名誉最優先、男友達の名誉も守るために言うと、絶対に何かが起こったりしない関係だからそんなふざけたことができたことを付け加えたい。

10代の終わりに寝食を共にしていた友達だから、異性でも同性でもない第三の関係性が成り立つようなそんな人間関係を築いてきた仲だったから、そんなおかしな展開も3人で笑いながら楽しんでいた。

 

何軒か当たってようやくOKを出してくれたラブホに行き着いた。

ラブホ側も怪しいと思うのか、相当警戒されていたんだと思う。

さっき当時の写真が出てきたから見てみたら、1人はおしゃれサラリーマンと言わんばかりに小奇麗な夏のスーツスタイル(ジャケットなし)、1人はデザイン関係の仕事の人という感じのラフなカジュアルスタイル、そしてその時に限ってタンクトップと短パンで「俺ゲイに見えるかな?」とか言ってたような気がする。

私はごくごく普通の格好をしていた。

そんなおかしな組合せだったから、余計と怪しまれたのかもしれない。

ホテルはすごく広くて、3人で隅から隅までチェックして、何なら記念撮影をしようとなって数枚写真を撮った(のをさっき見た)。

私は自分がどこで寝たのか覚えてないけれど、写真の中には疲れ果てて1人はソファー、1人はベッドの中で寝ているものもあった。

翌朝、私が最初に起きて2人には「私はこれから心理学のスクールの見学に行くから行くね」と言い、出ようとしたら「ふみこ、これからそんな真面目なところに行くの?(笑)俺らとさんざんこんなふざけたことしといて、そんなとこ行くの?(笑)それギャグかよ!?」っていうようなことを言われ、「いや、行く行く!ここに泊まることがイレギュラーで、本来見学に行くことが今日の目的だったんだから!」とぎゃあぎゃあ騒ぎながら、私はラブホを出た。

出る時、受付のおばちゃんに引き止められて、連れの2人はどうしたのかと聞かれた。

殺人とか薬とか怪しいことを疑ってます、と言わんばかりの感じを瞬時に感じた。

当たり前だけど何もないから「私だけ用事があって先に出ますけど、あとから2人も出てきます」と伝えてその場を後にした。

 

歌舞伎町から西口に回ってさらに都庁を越えたところで、まだ実際の目的地の半分くらいだということを知った。

やたらと木が鬱蒼と茂っている場所を見て「うわぁー、まだまだこの先だ」と思いながら早足で目的地を目指した。

突然オフィスビルよりもマンションやアパートが目立つ場所にきて、新宿も少し離れると普通に民家があるんだと思った記憶がある。

ようやく昭和に建てられたようなマンションに辿り着き、目的の部屋へと急いだ。

そして入ったらすでに講座は開始されていて、平日の午前の早い時間にも関わらず、何人かの大人たちが年配の細身の男性の先生と共にいて、そして冒頭の自殺未遂に終わってしまった男性の体験談が目の前で繰り広げられていた。

 

男性いわく、途中の記憶はなくて、自殺しようと思って風呂場の浴槽で何かしらの手段を講じて(手首切るとかじゃなくてかなりヘビーなことしたと思うけど忘れた)、そして一緒に住んでいるらしい彼女がそれを見つけて救急車を呼んで、そして自分が気付いた時に「自分は死ねなかった」ということを真っ先に思ったらしい。

普通の民家のような雰囲気の作りのマンションの一室でその一連のことを淡々と語る男性という部分だけが今も記憶に色濃く残っている。

その男性の顔とか、他の参加者の人たちの顔とか、先生の顔とか、そんなの一切覚えていない。

 

だけどよく考えたらシュールな出来事だったと思う。

前日は男友達とふざけて3人でラブホに泊まり、翌朝は心理学のクラスの見学どころか自殺未遂に終わり生き残った人の話を聞く。

変な時間ではあったけれど、8年経過しても「東京」と紐解いて真っ先に思い出した光景なんだから、それだけすごくインパクトのある時間ではあった。

 
 

過去の日記をめくってようやく行き着いた一文。

 
That was a miracle!
 

2015年12月6日吉祥寺
井の頭公園ですれ違った外国人の背の高い初老の男性がそう言い放った。

 

人生で起きてくる出来事は、たとえば上のようなシュールな状況でも、やっぱりミラクルだと思う。

過去のある日のある状況を忠実に今再現することはできない。

井の頭公園に行ったのだって、その当時は実に何年ぶりで、しかも吉祥寺でしか会えない人がいたから行って、そのついでに井の頭公園にも寄って、その外国人の男性の会話とすれ違った。

人生で起きることのすべてがミラクルと言ってもいいと思う。

 

そんな気持ちを抱きつつ、今も東京メモリーズを紐解いている。


~relative story~
未来の点

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