おいせさん手帳第16回目。
担当:ノム
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4月27日
自分にとって、本当に大切なものは何でしょう?
冥王星が逆行
占星術で「破壊と再生の星」とされる冥王星が、昨夜より逆行を開始。
自分の根幹をなすような部分に“待った”がかかるかもしれません。
あたりまえに続けてきたことを疑問に感じ始めるかもしれません。
一見、それは“停滞”と、ネガティブに思うかもしれませんが、
前へ進むことよりも、ずっと大切なことと向き合える恵みの時です。
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夏の日を思い出す。
ノムが書いた文章の中でも、圧倒的な強さで心奪われた文章だった。
「前へ進むことよりも大事なこと」
自分に向けられた言葉みたいだった。
もっと早くにこの言葉に出会いたかったくらい、本当に引き込まれた。
30代の10年間は何度立ち止まったかわからない。
それも数回、そして短くても数ヶ月、最長は1年半立ち止まった。
本当は1年8ヶ月と書こうと思ったけれど、1年半過ぎた頃に米の短期の仕事に行ったから、だから「動いた」という意味で1年半に書き直した。
本当にしんどい日々で、立ち止まっていた間は、笑ったり楽しんだりした瞬間もたしかにあったけれども、基本はしんどかった。
「動き出さなきゃ」
常に自分にそのように声をかけて、それで何とか自分を保とうとしていた。
何も決められない自分、何が楽しくて生きているのかわからない自分、今日でも明日でも人生が終わってもいいと思っている自分、そんな自分といることのしんどさと言ったらなかった。
何度も何度も「動きたくなる瞬間」を待った。
「動きたくなる」というのは、社会に出るだけじゃない。
布団から出るのに、トイレに行きたいでもおなかが空いたでもいい、そういう生理的欲求で構わないから、何か一歩を踏み出すきっかけが欲しかった。
私がしんどかった理由の一番は、何もしたくないのに何かしなきゃいけないと思い込んでいたことだと思う。
働かなくていいとも思えなければ、このままでいいとも当然思えなかった。
色々限界だったくせして、その自分の本当の気持ちをずっと無視し続けたんだなと思う。
日本にいて、何もせずじっとしているというのは、常日頃から自己評価の低い、自己否定の塊(かたまり)みたいな私からすると、生き地獄みたいな感じになる。
健康体で難解なことでなければある程度労働も提供できるくらいの能力はあっても、それでも働かない自分、何もしない自分は最低だと何度も思った。
なんなら親が家が建つくらいのお金をかけて私をアメリカの大学にまで出してくれたことさえも全部無駄にしているみたいで、もうただただ生きているのがしんどかった。
そんな時にもしノムの今日の文章に出会えていたのなら、どうだったんだろうと思う。
20代の終わり頃だったと思う。
1冊だけ鬱になった作家さんの小説を読んだ。
図書館で本を見たら絶対にわかるけれど、タイトルも著者名もうろ覚えだから、全く思い出せない。
どんな内容か知らずに手に取った本が、たまたま鬱になった作家さんの、おそらく実体験を元に書かれた小説だった。
その中の一節にこんな話がある。
その小説の中の主人公なり準主人公なりも鬱になる。
それに対して、その時じゃなきゃ、うんと下に屈んで(かがんで)みないと見えない景色がある、みたいなことを言っているところがあって、それにどれだけ救われたかわからない。
その時もだし、ノムの今回の文章もだけど、立ち止まることの偉大さを教えてくれてる。
20代の頃に一度だけかかった精神科でうつと言われた頃だった。
ある日の仕事帰りに、私は近くの土手を散歩した。
平日の昼間にそんなところを散歩している人なんて誰もいなくて、ゆっくりと歩いていた。
途中でアリの集団が穴の中と外とを行き来してみんなで食糧を運んでいるところを見かけた。
私はその場にしゃがんで、ひたすらその様子をじっと眺めていた。
それを見ていて、何か泣きたくなってしまう自分もいれば、生きてることそのものにも、そして自然の習性でそのように動いているアリたちにも、色んなものを見せてもらっている、そんな気持ちになっていた。
それから数年後、武道家の友達にその話をしたことがあった。
友達は笑い飛ばしてくれるのかと思いきや、真剣な顔して私に言った。
「ぶっしー、それ、しんどかったね」
友達はこんな風に続けた。
そんなことにまで目を向けて、そのアリの様子をじっと観察して色んなことを感じてしまうくらいに、それだけ神経が心が過敏に反応していたら、それは本当にしんどいよ、しんどかったね、よくやってきたね…、そんな風にとても静かに私を包むようにして言葉を伝えてくれた。
武道を何十年としている友達には、人の動きの1つ1つが次の動きに繋がるまで何重にも重なって、それでようやく1つの形になるということを体感覚的に知っているから、それを心の方で同じように感じ取った私をそこに重ね合わせて見てくれたんだと思う。
諸刃の剣みたいなもので、この細かさが人への心くばりとかそういうものに使われる時はものすごく良い方に向かうけれど、そうではなく使う先を見つけられず、さらには自分でも動けなくなると、その細かさは自分の心にとって凶器みたくなる。
当時は仕事をしていたとは言え、心は完全に疲弊していた。
何度も何度も私が立ち止まることになったのは、色んな理由が考えられるけれども、一番のことは「自分にやさしくする」ことがずっと長いことできなかったからだと思う。
30代の半ばくらいまで「自分にやさしくする」なんて考えたこともなかった。
だから、正しくは「できなかった」と言うよりも、自分にキツく当たりまくっていることにさえ気付かなかった。
そこに気付いた時から、たとえ引きこもりでもずいぶんと気持ち的に変わったと感じる。
自分にやさしくできないことにも私なんかは超ダメ出ししまくりだったけれども、そのことにさえ気付かなかった頃と比べたらものすごく進歩していた。
そして、そこが変わってからは、要は自分にやさしくするように努めてからは、徐々に雲が晴れるみたいな感じで、心の感触も変わってきた。
【あたりまえに続けてきたことを疑問に感じ始めるかもしれません。
一見、それは“停滞”と、ネガティブに思うかもしれませんが、
前へ進むことよりも、ずっと大切なことと向き合える恵みの時です。】
ノムが言うように、自分にやさしくすることは、私の場合、前に進むことよりもうんとうんと大事なことだった。
なんとなく動けていてなんとなく周りが求める結果も出していた頃、私の頭の中は「前進」ただあるのみだった。
前に進むことや成果を出すことが大事だと思っていた。
それは間違いではなかったし、それで実際に役に立つこともできたわけだから、全部を否定するつもりはない。
だけど、心はもうとっくに限界だった。
逃げ道のない自分という存在から四六時中ダメ出しを食らうわけだから、そりゃしんどくて仕方ない。
私は自分に「もっと」を求め続けた。
他の誰かではなく、私自身が私に「もっと」を求めた。
そうしているとは知らずにいたから、何で自分が動けないのか、何もしたくないのか、何だったら今日でも明日でも死んでもいいと思っていたのか、今ならよくわかる。
前に進まなくてもいいから、自分にやさしくすること。
結果が出せなくてもいいから、自分を他の誰よりもまずは大事にすること。
私の場合は、そこにすべての答えがあったと言ってもいい。
自分にやさしくできてからの前進やら結果やらが今の私には大事だったりする。
立ち止まることも時には大事ではなく、立ち止まることは本当にものすごく大事だと今の私は思う。
それは動くことよりも、もっともっと大切な何かがある。
特に動き慣れている私みたいな人は、立ち止まるのが本当に怖い。
立ち止まったらますます自分の存在価値が危うくなる気がしていたから、立ち止まったら終わりみたいに思っていた。
何度も何度も、合計するとおそらく30代の4年ほどは立ち止まって社会から離れたところで引きこもっていた時間、本当にしんどかったけれども、私は立ち止まって良かったと心底思っている。
また立ち止まることになったら怖いとも今も思うし、またいつ引きこもりだすかもわからない。
恐怖もある。
だけど、立ち止まっても色々何とかなったことは大きかった。
何にもどうにもならなくても、死なないし死ねないってわかった。
そして、なんだかわからないけれども、生き続ける限り、家でもお金でも食べ物でも必要最小限は何らかの形でもたらされる。
究極すぎる立ち止まりを推奨する気はないけれども、立ち止まることで初めて見える景色や気持ち、自分自身は必ずあると言えるし、そうしたものたちこそが自分を救ってくれたり後々に前を向けるようになる小さな投石になったりもする。
うつと言われた20代半ばの頃、友達がある時言ってくれた。
私がその場でずっと足踏みしているみたいで何も進んだ気がしないし、前に進める気もしないと言った時のこと。
「飽きるまで足踏みしたらいいよ!」
足踏みすることを否定しないどころか、そうした私のことも全身で大きなマルを作って「それでいいんだよ」と言ってもらえてるみたいだった。
私の勝手な予想だけど、今コロナで足止めを外から食らっていたり、これまで通りとはいかない状況にある場合、そこに向き合ったら向き合った分、それが自分に返ってくる気がする。
冥王星は破壊もするけれど、それは次なる再生に繋げるための破壊で、冥王星は単なる破壊だけをもたらすことはしない。
必ず再生とセットで色んなことをもたらす。
だとするなら、これまで通りとはますますいかないコロナ渦では、どれだけその上手くない状況に向き合えたかが再生への鍵になる気がする。
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