>>>いなくなった後
その人がいなくなって最初の週末が明けた月曜日の朝、私はとっさに「この貼り紙も変わる」と思って、車から出るなり貼り紙を写真に撮った(始業3分前)。
私が初めてその職場に足を踏み入れた時に見た貼り紙と一緒だった。
その日から書類上も全部名前が変わった。
私の読みは大正解で、そこも替えなきゃだったね!という声が出て、帰る頃には全てが新しいものに変わった。
目に入る範疇のものは、その人ではない名前が刻まれ、その人が本当にいないことを証明されてるみたいで悲しかった。
ちなみに私が「もっと見ておくべきだった!」となったのは、廊下に貼られていた書類で、私はそんなところ一切見たことがなかったけれど、それが入れ替わって後輩くんの直筆の名前を見た時に、「うっそー⁉︎こんなところに直筆があったなんて!気付かなかった(涙)」となった。
私が見たかったものの1つにその人の書いた文字を見てみたかった。
ほんの少しだけ、苗字を書いたのは見たことがあったけれど、せめてフルネームとか、もう少し文章までいかなくても箇条書き程度でもいいから見たかった。
あぁ見逃して悔しいーーーー‼︎‼︎となっていた。
当時残した携帯メモは、新しいiPhoneに自動的に引き継がれた。
自ら電話帳だけはデータ移行をしたけれど、それ以外は移行しなかった。
アプリとかネット上の記事のブックマークなんかは全てリセットされたけれど、メモだけはきちんと新しい方にも移された。
さっき読んでみて、それらが今の私に必要だったとわかった。
>>携帯メモより
○○○○サインのファイルに行き当たる
○○さんとPPPの人とのやり取りメール発見。○○さんの言葉遣いを初めて見る。
Sさんが下に来てくれる。○○さんは偉そうじゃなかった、昼休みその隣りの部屋で漫画読んでたんだよ、見つかってやめちゃったけど。という情報を教えてもらう。一番偉いんだから堂々としてたら良かったのに…の話から前の長は偉そうなところがあって、○○さんはそれが微塵もなかったという話になった。
ファイルの中から○○さんとPPPの人とのやり取りのメールのコピーが出てきた。
サインもメールも数十冊の中からそれぞれ1冊だけ。
メールの受信日時、ピンクのマーカー部分は、2016年6月9日 13:11
一年後の同じ日に○○さんと出逢う。
そして誕生日の数字。
悪いと思いつつ住所を見た。
新潟町…私も住んだ町と同じ名前
番地…1ー2ー3 前と後ろが一緒
号室…中学の時のクラスと同じ
2017/10/04のシンクロ
>>ここまでメモ
(個人情報部分は一部変更)
当時の用事を忘れたけれど、私はその人がいなくなった翌週から倉庫のファイル探しかそんな類いの何かを頼まれて、倉庫に行ってた。
カオスなその場所は、探し物が一発で見つかれば超ラッキーだけど、大概あれこれ動かしてようやくそのお目当ての1冊を見つけるみたいなのが毎度のことだった。
その時も適当なかごをイスにして、次から次へと探していくことになった。
そんな時、どうして私はそのファイルに行き着けたのかは知らない。
わざわざ中身を見る必要なんてなかったわけだから、私が何でそんなところまで見たのかは覚えていない。
ファイルから紙が飛び出していたのか、間違えて中身がひっくり返ったのか、ごちゃごちゃしていてファイルがいびつな形で直そうと思ったのか、どうしてその行為に至ったのかは覚えていない。
開いたら、その人の直筆のサインが入っていた書類が挟まってた。
地団駄踏みそうなぐらいに廊下の貼り紙のサイン=その人のフルネームの直筆サインを見落として悔しく思っていたから、余計とそのサインを見つけた時の喜びは大きかった。
こんな字を書くんだなぁと思って手を止めてしばらくじっと見ていた。
さらに同じファイルだったのか、別のファイルだったのか忘れたけれど、その人が外部の人とやり取りしたメールのコピーが挟まってた。
それ見て心臓が飛び出るぐらいにビックリした。
なぜか受信日時のところに蛍光ピンクでマーカーがしてあって、それが
2016年6月9日 13:11
だった。
最初、年を見落としていて日付しか見てなかったけれど、それが私がその人に初めて逢った日だった。
そして、13:11、最初の1はいらないけれど、3:11は私の誕生日だった。
きちんと見たら1年前とわかったけれど、何で1年前のその日の日付にマーカーがされていたのかは知らない。
何か意味があったんだとは思うけれど、傷心マックスみたいなその時にそれを見た私は、驚きと喜びとで涙が出そうになったか本当に出たかのどちらかだったと記憶している。
まるで1年後のその日は大切な日になりますよ、と言わんばかりにマークされてて、もちろんそんな意味はないんだけれども、あまりにも出来過ぎた偶然に最初は唖然呆然としたけれど、その後心が躍った。
偶然とは言え、本当に嬉しかった。
文章も読んだ。
中身は全然面白いものではなかったけれど、それでも私はその人が書いた部分は全部読み込んだ。
漢字の使い方・ひらがなの使い方がその人特有で、あぁこんな風に書くんだなぁ…と思って読んだ。
仕事の内容はわからない私ではあったけれど、その人の仕事の在り方はすごく良いのがわかった。
そういうのが伝わってくる文章だった。
短い文章の中は、必ず丁寧な挨拶で始まって丁寧な挨拶で終わる。
当たり前のことかもしれないけれど、その文章を見るとちょっと違うことがわかる。
数回やり取りしていた中で、言わなきゃいけないような内容のものがあった。
できれば平穏無事に進めたいものでも、そういう事情ではないんだろうなぁというのが伺える感じだった。
そういう時のその人の伝え方がすっごい上手だった。
相手側が結構な無茶ぶりを言い出している風で、調整が二転三転してる風だった。
そんな時にその人は、自分の会社側のできることをはっきりと提示しながら、でも絶対に相手を怒らせたり不快にさせることがないように言い方がとても配慮されていて、これなら相手にも伝わる!っていう感じの文章の書き方だった。
あと過去の事例かそんな類いのことにも触れて、今回も同じような配慮が必要かどうかもわざわざ聞いていた。
ビジネス文書だから、私が書く文みたいなごちゃごちゃ感は皆無で端的に用件をスパッと伝える感じだったけれど、そのスパッとした感じの中に大切なことを全部入れることができる、そういう文章を書く人だった。
だから、ありきたりな挨拶の言葉さえも、丁寧さが目立っていた。
単なる確認の時はそうではないけれど、わざわざ挟むぐらいの内容だから、けっこう際どいやり取りだったと思うけれど、そういう緊張感が伴うようなやり取りの時にこそその挨拶文が良い風になっていた。
しかも微妙に文が違うから、相手側がそんな細部まで気付くかどうかは別にして、1回1回きちんと書かれたものだというのがわかる。
余談だけれど、その人の評判が良いとその何ヶ月か後に聞いたのは、そのメールの送信主側の会社の人が言っていたことだった。
あのメールしか私は知らないけれど、あれなら間違いなく評判が良いのはわかる。
私の色メガネじゃなくて、本当にその人の普段からの仕事に対する姿勢とか在り方がその評判に繋がっていたんだと思う。
サインといいメールの文章といい、1人で超ツボにはまった私は、とりあえずその近くの数十冊のファイルを全部チェックしたんだと思う。
同じように何か挟まってるかもしれない!と思って。
でもそんなことはなくて、そのファイルだけだった。
そう、数十冊もある中で、私はたまたまそのメールでのやり取りの紙とサインの紙をいきなり見つけた。
ちなみにそれは後から知ったことだけれど、その人がその書類にサインするのは超レアで、普段はその人ではない人たちの名前が書いてある。
だから、そんな超がつくぐらいにレアなものに私はいきなり当たってた!
自分の変態具合を告白するのは勇気が要るけれども、私はその本人直筆のサインの紙をコピーして、サインの部分と日付の部分だけはさみで切り取って持ち帰った。
ノートに2つコピーしたサインがあっておかしいなと思ったら、私はきちんと注釈をつけてた。
1つはそのファイル整理で見つけた時。
もう1つはその前日の話で、挟んでおいて欲しいと頼まれた書類に本人直筆のサインがあって、それもこっそりコピーしてそして他の部分は破棄して、サイン部分だけ持ち帰ったからそれで2つだった。
その頼まれ事もその時が初めてで、その人がいなくなってから、私はそんな風にしてその人の足あとを見つける機会が増えた。
同じ日に、今度は別の書類の仕事をした時に、その人の住所は発見した。
その時の度肝を抜かれた感じと言ったらなかった。
私は今でもその住所をスラスラ言えるぐらいに一発で覚えた。
人の名前でさえ覚えられない人が、そして何通と手紙をやり取りしたことある友達の住所さえ毎回見なきゃ書けない人が、その人の住所は一発で覚えたんだから、それだけインパクトがあったということ。
しかもまさか、そのずっと後にその住所が意味あるものに変わるなんて、当時は想像さえつかなかった。
今の車が88888㎞になったその時、その人の住んでいた住所のごく近い場所に私はいた。
まさかあの時に見た住所がそんなところに繋がるなんて思ってもいなくて、当然だけど、そんなの狙ったわけでもなく、何をどうしたらそんな偶然を幾つも生み出せるのか不思議でならない。
とにかくその人にまつわる色んなことたちは、そうやってその人がいなくなってからも色んな場面で繋がっていた。
その辺りの携帯メモには、日々起こるシンクロをひたすら記録していたけれど、とにかくいなくなってからの最初の2週間ぐらいが凄かった。
それまで知ることのなかったその人にまつわるもの、書く文字だったり、書く文章だったり、住所だったりとそういうものが一気に来た。
その人の昼休みの過ごし方とか、偉そうじゃなかったエピソードとか、とにかく色々と話を耳にするようになった。
今回書くにあたって、当時のメモや手書きのメモなんかをあれこれ見た時に、かわいらしいエピソードが出てきた。
男の人に対してかわいいなんて言うのもおかしいかもだけど、私は聞いた時にかわいいなぁと思った。
いなくなった直後ではなく、聞いたのは2月だった。
何でそんな話になったのかさっぱりわからないけれど、Sさんが私に突然教えてくれたエピソードだった。
「○○さんね、運動神経良さそうに見えるのに、突然何もないところでつまずいたりしてたんだよ(笑)」と始まり、そういう時どうしてるのかを聞いたら、「そんなのつっこめないから私も何も言わないし、本人も何事もなかったようにしてるから。そうやって時々“えっ⁉︎”っていう抜け方してたんだよね」
そんな姿、超見てみたかった!と思いながらも、普通ならかなりどうでもいい情報でも私は知れるだけで嬉しかった。
>>>ちょっとつぶやき
振り返りも長くなってきたけれど、もう少しで終わる。
途中まで書いたものが3つ。
いなくなった後の振り返りはもう少し書きたいことがあるから、だから残り4つぐらいになるのかな…なんて思っている。
こんなにたくさん書くつもりでは当初なかったけれど、気付いたらこんな風になったから、もうこのままのスタイルで最後まで行く予定。
0 件のコメント:
コメントを投稿