2017年11月12日日曜日

占い

私がその占い師さんの存在を最初に知ったのは、地球の裏側で生活していた時だった。

リーマンショックの翌年、30歳、日本国内で通用する資格ゼロ、帰国後の転職活動が難を極めるのは必須だった。

ましてや自分が何をどうしたいのかもさっぱりわからず、さらには結婚以外の選択肢を全く視野に入れていなかった私にとって今後の自分の人生計画なんて、もう逃げれるものなら逃げたいの一言に尽きた。

そんな折に、日本でバリバリのキャリアを積んでいただろう、でもなぜかとっても穏やかで聞き上手な日本人男性が、なぜか私にある占い師さんの紹介を突然してきた。

占いに行くような人にはとても見えなかったし、しかもその人に学があるのも知っていた。

日本全国老若男女誰が聞いても知ってる大学の出身者で、べらべらと自らたくさん語るタイプの人ではなかったけれど、話すだけで「この人とても頭のキレる人」というのがすごく伝わる才を持っている人でもあった。

まずそんな人が占いに行っているのも驚いたけれど、何を思ったのか静かな口調ながらも熱心にさらりと勧めてくるのが私には不思議で仕方なかった。

ちなみにその人とは日本でも何回か再会を果たしているけれど、私にその人の何かお気に入りとか大切なものを紹介してくれたのはそれ1回きりだった。

そんな人がわざわざ個人的に占い師さんを紹介してきたから、しかも紹介したところでその人に何のメリットもないのになぜか真剣に勧めてきたから、私は日本に帰る前からその会ったこともない占い師さんが気になって気になって仕方なかった。

そもそも女友達ではなく男の人が真剣に占い師さんを紹介するというのがとても稀有で、それだけでも私には「日本に帰ったらやりたいこと」のリストに頭の中で自動入力した。

 

最初はネット予約をした。

自分の名前と生年月日、何を相談したいかをひたすら書いた。

相談内容は、もう嫌でも向き合わなければいけない自分の人生に対して、自分がどういうことに向いていてどういうことを今後していくと良くて…とかそういう類いのことをあれこれ書いた。

そして最後の最後に、どうしても自分が次に進むために「もう終わりです」ということを告げて欲しくて、ある情報をたった1行だけ書いた。

 

その占い師のおばちゃんのところに私は最低3回、もしかしたら4回通ったけれど、最初の1回は本当に度肝を抜かれた。

私が本当に聞きたかったことではなく、そうではないことを延々と9割以上の時間説明された。

おばちゃんがあんなにも熱く語ったのは無理もなかったのかもしれない。

いつかの回の時に私はおばちゃんが当時説明してくれたことが他の人たちにも普通に起こることなのかを聞いたことがあった。

何千人という人たちを鑑定してきて、貴女のようなことが起こった人はもう1人しか知らない、と言われた。

 

おばちゃんはいつの時も未来に起こりうるいくつかのことを教えてくれる。

起こりうることは、あくまでも「起こりうる可能性」という感じで、基本的には絶対ではない。

だけど限りなく「起こる」よりの意味合いで起こりうるということを言ってくれる。

最初か2回目の時、1つのことをおばちゃんははっきりと「そうなる」と断定した。

いつとは言えないけれど、絶対に起こってくる、と断言した。

おばちゃんはそのこと以外で1つとして私に「絶対に起こってくる」と断言したことはない。

最初言われた私は、本気で嘘だと思った。

そんなことが起こるわけがない、と。

変な期待を持つのも嫌で、私はおばちゃんが絶対にそうだと言うにも関わらず、そのことは起こらないこととして自分の中にとどめておこうと決めた。

おばちゃんが起こると言ったことは、太陽が東ではなく西から昇るぐらいの天変地異でも起こらなければ起こらないようなことだった。

 

おばちゃんの予言めいた話なんかすっかり忘れて日常を送っていたある年の秋の日。

それから何年経過したかなんて覚えてない。

だけど、そのおばちゃんが「絶対に起こってくる」と断言したまさにそのことが本当に起こった。

冗談かと思った。

その時の驚きと言ったらなかった。

人生で一番驚いたかもしれない。

 

おばちゃんの他にもすごいところは、過去を言い当ててくるところ。

しかも、DSみたいな機械で何だか知らないものを入力すると、年と月まで割り出してくるらしく、おばちゃんは私の過去の大きな出来事をまさに年と月まで言い当ててきた。

私はおばちゃんにそのことなんて1つも喋ってないし、ヒントすらも言ってない。

なのにそのDSみたいな機械は色んなことをおばちゃんに伝えるらしく、おばちゃんはそこから導き出した何かを私に「あなたこれこれこういうことが、○○年○月になかった?」とあっさりと聞いてくる。

 

今も決めかねているけれど、私は来月東京に行く時、おばちゃんにまた予約を取って会ってこようかと思っている。

不思議な流れになっている今の状態を、もう少し冷静におばちゃんのような人に分析してもらってさらに先々のヒントがあれば聞きたいから。

 

よく会話の中で「占いを信じる信じない」みたいなのがある。

テレビなんかでも一つの特集として話題に上がることもある。

もちろんそんなの個人の好きに信じたらいいと思うし、否定派の人には否定派の人の考え方や感じ方があるからそれでいいと思う。

だけど、私がこのおばちゃんに言えることは、信じる信じないの前に未来も過去もあれこれ言い当てて本当にその通りに起こったりまたは過去に起こったり、それで信じないなんていう選択肢はもはやない。

疑いようのない事実を突き付けられている。

「参りました」の一言に尽きる。
 
 
~relative event~

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