夕方6時を回ってから買い物がてら散歩に出た。
毎年緑のカーテンに力を入れている内装業の小さな事務所がある。
すでに真夏日みたいな今年も、そこの事務所の前はすでに緑のカーテンが完成している。
そこで今年初めての朝顔を見た。
色は、濃いピンクと紫の中間のような色。
今朝はどうやら2輪咲いたらしい。
夕方だから朝顔はしぼんでいたけれど、もう朝顔が咲く時期なんだとびっくりする。
空は今にも雨が降りそうな色をしていて、時折強めの生ぬるい風が吹いていた。
丁度その事務所の前を通りかかったら、チリンチリンと風鈴の音がする。
よく目をこらして見ると緑のカーテンの朝顔の葉っぱたちの後ろに隠れてガラス製の風鈴がある。
それが葉っぱと葉っぱの間から入ってくる風を受けて、チリンチリンと音を響かせている。
朝顔も風鈴も両方とも子どもの時分から見慣れたものだけど、2つがセットになっていてさらに
丁度風が吹いて風鈴の音も耳にする、なんていうのは初めてじゃないかと思う。
「風情」とか「粋」とかいう言葉がぴったりだ。
話は変わるけど、今日の朝顔と風鈴じゃないけど、そういう季節のものを見て感動するのは
日本人特有の感性らしい。
海外事情に詳しい人たちから何人かそう聞いたし、実際にわたしも個人的にそれに類する話を
聞いたことがある。
ドミニカ共和国にいた頃、日系の移民の方たちにお会いする機会が何回かあった。
あるご夫妻にお会いした時のこと。
二人とも当時で70歳近い年齢だったと予想している。
子どもの頃に移民として日本からドミニカにやってきて、そのままもう50年以上こっちでの生活に
なったよ、というお二人だった。
日本にも親戚はいるから時々日本にも行くとは話されていた。
いつかの年、春の桜の時期に日本に行ったようで、桜の写真を私に見せながら
「桜きれいなのはわかるんだけどねぇ、なんで日本人が毎年『さくら、さくら』ってあんなに桜を
ありがたがって、そして毎年同じ花が咲くのにそれを喜んで見れるのかがわからない。
飽きないもんかねぇ?」
と奥さんの方が言われた。
旦那さんも隣りで、そうだそうだとうなずいていた。
わたしはその二人のぼやきを聞いて、心底驚いた。
たしかに、毎年同じ花が咲くけれども、毎年何とも言えない良さがある。
しかも毎年見ても飽きることなど一度もない。
別にどちらが良い悪いではなく、この発言を聞いた時に初めて「日本に住む日本人特有の感性」
に気付かされた。
同じ日本人でも、海外の生活の方が長く、ましてや幼少の時だけ日本、あとは外国となると、
この桜に感動する感覚がどうもわからないらしい。
たった2人の日本人の方の例だから、どこまで本当かなんてわからないけど、わたしはこういう
感性は好きだからやっぱり知っていて良かったと思っている。
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