昨日のコーヒーショップでの出来事。
窓側には横一列にカウンター調のような1人席になっていて、私はその一番奥にいた。
基本的に座る人はみんなおひとり様で、それぞれ何か調べ物や書き物をして、ある程度終わると席を立っていなくなるという風だった。
私は期限付きのホロスコープ動画とアメリカでは有名らしきヒーラー(ヒーリングをする人)の動画を見てひたすらメモを取っていた。
途中で自分の親ぐらいの男女がやってきた。
若くて還暦、もしかしたら70前後かな…という感じ。
どう見ても孫がいる、そんな年齢の人たち。
私は最初その人たちは夫婦なのかと思った。
ても男性側がヨーロッパに旅行に行ってその時のコインを女性に見せた時、夫婦じゃなかったことが判明した。
夫婦なら「ヨーロッパに行ってきて」なんて会話は家で済むし、外に出てまでコインを見せるなんてそんな面倒なことしなくてもいい。
家で話して家で見せれば事足りるようなことをわざわざ外でしてたから、夫婦じゃなかったんだな…と気付いた。
私はまた動画に戻って真剣に聞いてた。
だけど、何か一瞬、違うものを感知したのだろう。
ふと横を見ると、その夫婦ではない男性側が突然女性の髪の毛を触っていた。
ゴミが付いていたらしいけれど、その仕草を見て、この人この女の人に恋してるんだと思った。
触り方が妙な色気というか下心が見える触り方で、私は度肝を抜かれてガン見してしまった。
気になってよくよく2人を観察してみると、女性もデートとしてそこにいるような気がしてならなかった。
戒めなのか普段からなのかは知らないけれど、両方の薬指に指輪をしていた。
左手薬指の結婚指輪はわかる、でも右手の薬指の指輪は何だろうと思った。
あの世代の人の指輪の付け方はよく知らないけれど、私の世代では結婚してる女性で右手薬指にも指輪をはめてる人はほとんどいない。
同世代の既婚女性たちが右手薬指にも指輪をはめる時は、結婚式なんかのお呼ばれの時にダイヤモンドなんかがついてる婚約指輪をしてる。
その時ぐらいしか見たことがない。
私はアホすぎて、一度結婚してる友達が共通の友達の結婚式で指輪をしてなくて、忘れたの?と聞いたことがある。
「違うの。うち、今それどころじゃなくて、嫌だから指輪してないの」と返ってきた。
そんなこと聞く予定でも告白させる予定でもなかったから、私の失礼な質問を謝った。
友達は全く気にしてなくて、その後旦那とのあれこれを私に教えてくれた。
くだんの女性の右手薬指の指輪の意味は知らない。
だけど、そんな細かな事情を知らなくても、男の人ならそれ見て「結婚してる」ことだけはよくわかると思う。
ちなみに男性側は指輪はしてなくて、左手首に水晶みたいな透明色に近いパワーストーンのブレスレットを付けていた。
女性の様子を観察した。
よく見ると、ピンクとオレンジの間のようなマニキュアを付けている。
女の私から見ても可愛い色だなと思う。
爪は短くしていたから、普段からお母さん業なり妻業をしてると思う。
普段なら家事をする手なんだと思う。
服装のスカートをよく見ると、これおしゃれ着なんだろうなと思った。
黒のカットソー的なものに白の薄手のカーディガン、スカートは紺色だけどそこに小さな模様が入っていて、形もふわっとしたもので、清楚な出で立ちだった。
普段着ではなく、今日はおしゃれしてきましたみたいな格好だった。
また動画に戻るも、あの2人の動向の方が面白すぎて、私は何度もそちらを見た。
2人は完全に2人の世界に陶酔してるから、私が数個離れた席からキョロキョロ見渡していても目に入らない様子だった。
女の人がパンを食べ終えた頃、これまたすごい場面に遭遇した。
男の人がナプキンを手に取って、女の人の唇を拭いてあげてた。
エロいとしか言いようのないシーンだった。
それを見て、その男の人がいかにその女の人に触れたいと思っているのか、ものすごく伝わってきた。
そもそも髪の毛とか唇とか、普通には触らない場所ばかりを触っていて、見てる私の方がドギマギした 笑。
2人の距離も微妙だった。
触れそうで触れないみたいな距離感を保っていて、の割にはやたらと近くて、相手の顔を見て話す時なんか、体の向きをわざわざ変える関係ですごく近くなっていた。
2人はずっと色んな話をしていて、その時話題に出た何かを急遽見に行くことになって店を出た。
話の感じから、多分趣味とか何かの会で一緒になった人たちかなと思われる。
私の席から2人が並んで歩いている姿が見えたけれど、手は繋いでいなかった。
だけれど、多分男の方はものすごくその女の人が好きなんだろうなぁと思った。
元からなのかはわからないけれど、あの世代にしては珍しくレディーファーストを実践してる人だった。
食べ終わった食器は彼がさっと持って片付けて(団塊の世代辺り+超保守的な田舎町ではものすごく珍しいタイプ)、相手の女性に気遣いながら歩いてる様子もわかった。
その2人の関係は最後までわからなかったけれど、見ていてなんか良かった。
そんなの見てたら2つほど福祉の仕事をしてた時のことを思い出した。
社会福祉の国家資格の受験資格を取るために、私は20代の頃、通信の大学に通った。
ある程度の単位が取れたから、現場実習に行くことになった。
その時私は、社会福祉協議会と呼ばれる地域福祉の窓口みたいな機関に世話になっていた。
10日程の実習の中で、1日は介護予防的なデイケアに行くことになった。
関係ないけれど、アメリカの実習の時は8ヶ月450時間以上が単位取得のための必須時間で、だから単純に1日あたり6時間とかだと週に10日以上、私は最初は子どもたちの帰宅時間に合わせての実習で夏休みになるまでは1日3時間しか行けなくて、ほぼほぼ毎日通わなきゃ単位が取れなくて、本気で嫌だった。
だから日本の実習時間の短さに度肝を抜かれた。
こんなの見学と何が違うのかさっぱりわからなかった。
それはそうと、そのデイケアでのこと。
40代ぐらいの明るい女性が担当で、会場の施設に行くまでの車中、簡単に今日の1日の流れを説明してくれた。
その時にその女性は何度も「武士俣さん、びっくりするかもしれませんが、いらっしゃる利用者の女性たち、おばあちゃんたちですね、とにかく最初から最後まで下ネタオンパレードなので、そういうものだと心に留めておいて下さいね。本当に驚きますよ」と言っていた。
私はちょっと大袈裟に言ってるのかと思っていた。
だって、あれこれボケ予防的な活動があるから、そんなに喋る時間があるんだろうか?と思ったし、そんなにもばあさんたちが下ネタばかり話すというのが想像できなかった。
私はその前にももっと大規模な特養(特別養護老人ホーム)のデイケアも実習で行って、その時はそんなことなかったから、そうなんだ〜ぐらいに思ってた。
9時〜3時とか9時〜4時ぐらいの時間だったと思う。
その担当者の女性の方が言っていた通り、ばあさんたちは昼寝の時以外、本当にずっとずっと下ネタばかりを話してた。
お茶飲みの時間が午前と午後各1回、あとパッチワークでポーチを作る手芸の時間、他にもう1つちょっとした作業か訓練の時間、仕出し弁当でのお昼の時間、最後紙芝居の時間、というけっこう活動そのものは盛り沢山で忙しかったのに、ばあさんたちは活動の内容に関係なくずっと下ネタばかりを楽しそうに話してた。
8人もいなかったと思うけれど、先導者がいるわけでもなんでもなく、みんながみんな話してた。
ばあさんたちの若かりし頃なんてまだ車の時代ではなかったから、救急車もないような時代だった。
ちなみに当時で80歳から上の世代だったと記憶している。
私は忘れもしないけれど、その下ネタの中で、市内の書店のじいさんと相手がその人の奥さんなのか不倫相手だったのかは忘れたけれど(多分後者)、なんと事の最中に膣痙攣を起こしたらしい。
医院に運ぶことになったけれど、それこそ互いに裸で抱き合ったまま田舎の野菜売りのばあさんが使うような荷台車に乗せて運んだという話をしてた。
そういう下世話な話を80も過ぎたばあさんたちがガハガハ笑いながらずっと話してた。
お茶飲みしてようが手芸の作業をしてようが、ばあさんたちは口も手も動かしていて、私より余程器用だった。
最後の紙芝居がまたすごかった。
この担当者の女性も心得ていて、ばあさんたちが喜ぶ内容の話を選んでいた。
その時の内容は、惚れ薬的な水があって、それを飲むとたちまち目の前の人を好きになるという話だった。
紙芝居の主人公はばあさんなんだけど、ばあさんがその水を若者に渡して、若い男はそのばあさんに惚れてしまう、というハチャメチャなストーリーだった。
そこからばあさんたちの妄想は大炸裂して、その後帰るまでずっとずっとその紙芝居の色恋話と自分たちとを重ね合わせてあれこれ話をしていた。
私が人生で見たばあさんで一番元気なばあさんたちだった。
ばあさんたちが送迎車に乗って帰った後、担当者の女性から「凄かったでしょ?」と聞かれた。
私は想像以上に凄かったと答えた。
「武士俣さん、色んな考え方があると思うけれど、私はあれでいいと思ってるの。ここに来てる利用者さんたち、みんなこの日を楽しみにしているの。本当に楽しいからね。そしてゲラゲラ笑って楽しい時間を過ごして、少しでもボケ予防とか寝たきり予防ができるなら、それが一番だと思ってるから、だから下ネタばかりでも私はそれでみんなが元気になるならそれでいいと思っていてね」
と教えてくれた。
確かにそうだった。
そのばあさんたちは、下ネタトークに忙しくて、ボケたり寝たきりになってる場合ではなさそうだった。
もう1つの話。
これも社会福祉の通信教育の時。
ある時のスクーリングの授業の中で、施設とかに勤めてる人たちは、そのグループ内でその施設特有のプログラムがあったらお互いに紹介しましょうみたいな時間だったと思う。
数人のグループで、その時の話も凄いインパクトがあった。
30歳前後の男性の話で、彼は特別養護老人ホームの職員さんだった。
特別養護老人ホームというのは、介護度の高い高齢者が生活する介護施設。
軽い人たちは基本的に後回しで、寝たきりかそれに近い介護の必要な人たちが優先的に入所する(施設に入るまで2年待ちとか3年待ちなんてよく言われるのがこの特養)。
で、その男性での施設での取り組みのこと。
ある時、試験的に寝たきりの男性数名を対象に別室に集めて、そこでアダルトビデオ鑑賞会をしたらしい。
それで本人の生活レベルが戻ったりするという研究結果があるらしく、物は試しとその施設でもやったらしい。
嘘みたいな本当の話で、そのアダルトビデオ鑑賞会を重ねた結果、なんとその寝たきりの男性たちが自力で歩くまでに回復したとのこと。
人間の三大欲求とは本当にすごくて、性欲を刺激したことで人間らしい生活が取り戻されて、それ以来その施設では定例のプログラムとして普通に導入してるらしい。
性欲って凄いんだな、人間の生きる力そのものなんだと感想を言われてた気がする。
冒頭のコーヒーショップの男女のやり取りもそうだったけれど、それだけで生きる時間に彩りがある。
ばあさんたちも下ネタガンガン、マシンガントークのように延々と話していたけれど、みんなそれではつらつとしてた。
最後のアダルトビデオ鑑賞会だって、世間的には眉をひそめるようなものでも、それで元気になってその人が余生を楽しめるだけの体力や気力が回復されたら、それほど良いことはない。
何歳になっても恋する力とか、性的な意欲とか、そういうのって生きることそのものに繋がっていくんだなと思った。
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